研究会・出張報告(2007年度)
研究会- グループ1研究会(2008年2月23日上智大学)
日時:2008年2月23日(土)
場所:上智大学2-630a号室
発表:Abou Elela Mady(アブー・アラー・マーディー)(在カイロ国際研究センター)
“The Wasat Party and Egyptian Politics”
報告:
マーディー氏はワサト党の結党に関わった人であり、その立場から穏健派イスラーム政治運動組織がめざすイスラームと国家の関係を理論的、かつ実践的に論じた。氏の報告の後に、横田貴之氏がコメントし、それから全体討論がなされた。
報告の要点は次の諸点である。
イスラームの立場を保ちつつも、諸宗教が共存するイスラーム国家体制の樹立は可能であること、しかし、のためにはイスラームの側からの積極的な対話と相互理解の働きかけが必要であること、多元的共存のための第一の条件は暴力的手段を排除すること、イスラームの中に多元的で寛容な価値観を植え付けるためには西欧の近代思想や文明を排除するのではなく、理解し取り入れる努力をすべきであること、個人の自立とそれに基づくイスラーム社会の実現が望まれるなどである。
コメント及び討論の要点は以下の通りである。
第一は、ムスリム同胞団から出たワサト党がなぜこのような柔軟なイデオロギーを確立出きたのか、第二に、知識人はともかく大衆はワサト党のイデオロギーを理解できるのか、第三に、ワサト党の支持基盤はどこにあるのか、また大衆運動として発展の可能性はあるのか、などである。
結論としては、ワサト党自身が非合法であり、かつ若い組織であるため、提示されたこれらの諸問題に明快な答えは用意されていなかったが、イスラーム運動の展望としてはポスト・イスラーム主義とも近く、きわめて興味深かった。
(私市正年)