研究会・出張報告(2007年度)

   研究会

日時:2007年12月15日(土)13:30-15:30
場所:上智大学2-510号室
講演:Khalil Karam(ハリール・カラム)(サン・ジョセフ大学、レバノン)
  “Minorities in the Middle East: Past and Future of the Maronites”(「中東のマイノリティ―マロン派の過去と未来」)

概要:
 ハリール・カラム氏は、レバノンのベイルートにあり、上智大学と同じくカソリック系の教育研究機関であるサン・ジョセフ大学の副学長である。今回の訪日は2007年度初めに上智大学とサン・ジョセフ大学との間に結ばれた学術交流協定に実を与えるべく、学術交流協定締結を仲介訳であり、上智大学拠点の母体でもあるアジア文化研究所が研究交流を目的として同氏を招聘したのに応じてのことであり、同氏の学術上その他の知識と経験を生かし、研究所および本拠点グループ1と連携して2度の講演が実施された。
 その講演の第2回であり、グループ3が主管した本講演は、カラム氏がレバノンに由来する東方協会の宗派であるマロン派に属し、今回の訪日にあたっても親書を携えてくるなどマロン派総主教(スフェイル枢機卿)と親密であり、また政治運動としてのマロン派連盟においても、2001~03年に議長を務めるなど有力な平信徒であるところから、マロン派の歴史と現状に関する講演を依頼した。
 この要請に対して、カラム氏はやや一般的な題目ではあるが、「中東のマイノリティ―マロン派の過去と未来」の表題を示し、多数のスライドを使って能弁にマロン派について語った。研究者による発表というよりは、当事者から自分の帰属する集団に関する思いを聞くという体の講演会となったが、これまで知識として知っていたことに具体的なイメージを抱けたことや、移民とともに南米、オーストラリアなどにまで広がるマロン派のネットワークに目を向けられたことは、大きな収穫だったと言えるだろう。
 普段から本グループの研究に携わっている者はもちろん、上智大学の神父や東京在住のレバノン人学生など、聴衆の顔ぶれの多彩さも興味深い講演会であった。あえて言えば、マロン派連盟についてなど政治に関係する話題が慎重に避けられた点など、もっと掘り下げた議論が望まれた点は若干心残りではあった。
 (赤堀雅幸)