研究会・出張報告(2007年度)

   研究会

主催者:イスラーム地域研究中心拠点早稲田大学イスラーム地域研究所、上智大学イスラーム地域研究拠点グループ2共催
日時:2007年11月2日(金)17時-19時半
場所:上智大学四谷キャンパス2号館6階630a会議室
報告者:Mr. Ervan Nurtawab (Syarif Hidayatullah State Islmic University)
演題:The PKS and the Future of Islamic State in Indonesia: "A Long-Running Jihad".
  (注:PKS=Partai Keadilan Sejahtera: Welfare and Justice Party) 
コメント:見市建(岩手県立大学)
使用言語:英語(通訳なし)


報告:
 報告者は、インドネシアの選挙で近年得票を伸ばしている福祉正義党(Partai Keadilan Sejahtera: PKS、1998年設立)について、同党設立の経緯、思想的特徴、組織化の過程を紹介し、PKS活動家の構想するイスラーム国家の理念を検討した。PKSのイスラーム国家理念は、エジプトのムスリム同胞団の思想から強い影響を受けている。PKSの活動家は、結党の20年ほど前から、タルビヤと呼ばれる教育活動を通じて、強力で秘密主義的な組織形成を進めてきた。彼らは最終的にイスラーム国家設立を目指しているものの、そのためにはその社会の人びとが、生活のあらゆる面においてイスラーム法を実践することの重要性を理解するようになることが必要であるとし、長期間かけてじっくりと社会全体のイスラーム化を進めることを優先させる戦略をとっている。従って、2009年に予定されている選挙において、PKSが表立ってイスラーム国家化を主張したり、イスラーム的シンボルを使用することはないであろう。しかし、将来において、福祉正義党が政権をとった場合、インドネシアのイスラーム国家化を主張する可能性を示唆した。
 見市は詳細な報告の大半に同意した上で、2004年選挙以降、福祉正義党はとりわけ地方において世俗政党とも多様な連立を組んでいる点や、急進的なイスラーム主義勢力とは一線を画している点を指摘し、近い将来福祉正義党がイスラーム国家樹立を主張する可能性を否定した。他方で、党内の急進派がイスラーム国家樹立を唱えることを黙認しながら、中央執行部は決してそのような立場を公式には認めない福祉正義党の「バランス感覚」について言及した。
 (川島緑、見市建)