研究会・出張報告(2007年度)
出張報告- インドネシアにおける文献調査(2007年8月15日~2007年9月1日)
期間:2007年8月15日~2007年9月1日
国名:インドネシア(アチェ州およびメダン)
出張者:菅原由美(天理大学国際文化学部講師)
用務先:アル・ラニーリ国立イスラーム大学、タノ・アベ宗教塾、イスラーム書店
用務:イスラーム写本調査及びイスラーム書籍購入
概要:
①アチェ州
アチェ・ブサール県スリムンにあるタノ・アベ宗教塾において、所蔵写本調査を行った。同宗教塾は、インドネシアで最大の写本図書館を持ち、かつては4000冊もの写本を収蔵していたと言われていたが、アクセスの難しさ故に、この図書館のコレクションすべてを載せたカタログはいまだに出版されていない。昨年、塾長が亡くなり、核となる後継者が不在のままであったため、調査は難航した。200冊ほどの写本について調査をすることができたが、それ以外の写本については、所在を明らかにすることができなかった。写本はアラビア語、マレー語、アチェ語で書かれ、多くはイスラーム学のキターブであったが、物語もわずかながら存在した。タノ・アベで書かれた写本だけでなく、アチェの他の土地で書かれ、この宗教塾に寄贈された写本も存在した。また、西洋紙だけでなく、ダルワン紙による写本も数点存在していたところから、写本がかなり遠方(ジャワ?)からも伝わった可能性が見受けられた(アチェでダルワン紙は製造されていない)。この宗教塾がこの地域一帯における一つの知の集積地となっていたことがわかる。
②メダン
メダンでは、出版されているジャウィ(アラビア文字マレー語)のキターブに関する調査をおこなった。インドネシア国内の他地域と比べて、珍しいことにインド系の住民がキターブの売買をおこなっていた(他の地域では、アラブ系住民が売買を行っている)。ジャウィ本は店頭に並べられてはいなかったが、全部で20種類ほど、ローカル用、特に初心者向けテキストとして、出版され、販売されていた。アラビア語テキストのマレー語翻訳本ではなく、初心者向けに特別に執筆されたテキストが多く、その点においても他地域で出版されているキターブとは異なった。おそらく購入者は、プサントレン関係者であると思われるが、メダンでは、宗教系公立学校でジャウィを6年間勉強する。従って、ジャウィのキターブ購入者は、プサントレン関係者だけでなく、プサントレン外の人々である可能性もある。
(菅原由美)