研究会・出張報告(2007年度)

   研究会

日時:2007年7月14日(土)13時30分~17時30分
場所:上智大学2号館630a 会議室
報告:
1. 三代川寛子氏(上智大学大学院博士後期課程)
 「現代エジプトにおけるムスリム同胞団とコプト」
 コメンテーター・横田貴之氏(日本国際問題研究所)
2. 見市建氏(岩手県立大学)
 「比較のなかのジャマーア・イスラミヤ:武装闘争派イデオロギー形成の背景」
 コメンテーター・小林寧子氏(南山大学)

報告②:
○見市健(岩手県立大学)「比較のなかのジャマーア・イスラミヤ:武装闘争派イデオロギー形成の背景」

 見市建氏は、グループ1第3回研究会において、「比較のなかのジャマーア・イスラミヤ:武装闘争派のイデオロギー形成の背景」と題して、インドネシアの武装闘争派ジャマーア・イスラミヤのイデオロギーの中身とその起源について発表した。
 まず、はじめに、ジャマーア・イスラミヤおよび関連組織がインドネシアで起こしたとされる主要事件を紹介した。欧米の企業や大使館を標的とした事件は2005年以降発生しておらず、運動に変化が見られるという点を指摘していた。つづいて、インドネシアのイスラーム政治史におけるジャマーア・イスラミヤとして、ダルル・イスラーム運動の指導者であるカルトスウィルヨの解説に始まり、スカルノ政権・スハルト政権時代のインドネシア政治史とジャマーア・イスラミヤの登場について概観した。
 本題である武装闘争派のイデオロギーでは、ジャマーア・イスラミヤの創設者であるアブドゥラ・スンカル、ジャマーア・イスラミヤの指導者であるアブ・バカル・バアシル、イマム・サムドラの著作の検討を通して、ジャマーア・イスラミヤの思想と方法論を解説した。
 最後にまとめとして、サラフィー(ワッハーブ)主義団体との関係や影響など、ジャマーア・イスラミヤの変化について述べられた。また、広く教義の位置づけを検討するため、今後は学校カリキュラムや教科書等の検討も必要であるとした。
 参加者からは、イスラーム研究、インドネシア研究といった様々な立場からのコメントがなされた。特に、ダルル・イスラーム運動とジャマーア・イスラミヤとの思想的つながりについては複数の質問があった。ダルル・イスラーム運動からジャマーア・イスラミヤへの思想的変容については今後の課題としても挙げられていた。今回の発表ではエジプトとの比較という側面からの見解も含まれており、地域間比較を行いつつグループの研究を進める上で意義深い発表であった。
 (菊池恵理子・上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科博士前期課程)