研究会・出張報告(2006年度)

   研究会

日時:2007年1月20日13:00~18:00
場所:上智大学2-630a室
参加者:15名

報告③:
○鷹木恵子(桜美林大学)「マイクロクレジットの動向と中東」
 2006年にムハンマド・ユヌスがノーベル平和賞受賞をきっかけに、再び注目され始めたマイクロクレジット、いわゆる超小規模金融(貸付)に関して鷹木恵子氏は「マイクロクレジットの動向と中東」という題で発表を行った。参加者の間ではあまりなじみのないものであったため、まずマイクロクレジットの一般的な考え方を確認し、次いで中東、特に鷹木氏が取り組んでいるチュニジア、アルジェリア、モロッコのマグリブ3国におけるマイクロクレジットの実施状況を時系列的に追った。
 マイクロクレジットは自助努力による貧困削減を究極的な目標として掲げており、そのためには労働参加が困難な一般女性のエンパワーメントによる間接的な効果が期待されている。誕生当時とは異なり、現在ではサービスの多様化により徐々に形態が複雑になってきている。しかし、中東諸国での実施形態は、石油依存経済による格差是正を見据えた失業対策、若年層の雇用創出、起業訓練に目的が集中している。また、融資の多くは莫大な政府援助に基づいた超低金利によるものであり、自助努力による貧困からの脱出というよりは、形を変えただけの補助金プログラムという感は否めない状況にある。参加者の中からも懐疑的な声が多数あげられたが、マイクロクレジットこそ貧困削減に対する絶対的な万能薬であるという美化されたイメージが定着してしまっていることに原因がある、という共通認識を得られたのではないだろうか。
 (相川洋介・上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科博士前期課程)