研究会・出張報告(2006年度)
研究会- グループ1第2回研究会(2007年1月20日上智大学2-630a室)
日時:2007年1月20日13:00~18:00
場所:上智大学2-630a室
参加者:15名
報告②:
○高岡豊(中東調査会)「ヒズボッラー研究の現状」
「イスラーム地域研究」Ⅱ-1グループの第2回研究会において、高岡豊氏は「ヒズボッラー研究の現状」というテーマで発表を行なった。本発表の目的は、現時点におけるヒズボッラー研究の現状を、一次資料、二次資料を用いてレヴューすることであった。
発表者ははじめに、ヒズボッラーの政治的・社会的重要さを強調し、ヒズボッラーの多様な側面を概観した。発表者は、同党は米国・西洋諸国や地域の諸国の政治的争点であり、米国主導の「対テロ戦争」の文脈においては「テロ組織」としてその武装解除が問題となり、また、レバノン国内では合法政党としても顔も持ち合わせており、その成功は、また、レバノンの国内情勢とも大いにリンクしている、と指摘している。
さらに発表者は、代表的なヒズボッラーの出版物と二次資料を簡単に紹介し、そのレヴューを行なった。その際、ヒズボッラー自身の出版物は、結党の経緯解説、思想や目標の注釈、活動の内情について内部情報を含む点で優れるが、同党にとって不都合な情報は発表されないという短所がある、と指摘された。また、二次資料は、ヒズブッラーの性質として「レバノンの内発的な運動」としての性質を重視する立場の研究と、イランやシリアのような外部勢力の代理者としての性質を重視した「外部決定論」的な研究に大別されるが、ヒズブッラーの個々の活動や時事問題についての考察に特化するなどして、ヒズブッラーの性質について特段見解を表明しない研究も多い、と指摘された。
最後に、ヒズボッラー研究における今後の課題として、同党の秘密性と性質のあいまいさ、ポスト・イスラミズムとの関連についての言及があった。
コメンテーターやフロアからは、各々の専門の事例に引きつけた、興味深いコメントがなされた。
(溝渕正季・上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科博士前期課程)