研究会・出張報告(2006年度)

   研究会

日時:2007年1月12日(金)15:00~1月14日(日)11:00
会場:天理大学研究棟 (奈良県天理市)
参加者:13人

プログラム:
1月12日(金)
 15:00 天理大学研究棟3階インドネシア語共同研究室集合
 15:00-17:00 天理大学図書館見学、資料閲覧
 17:00- 天理教神殿・礼拝場見学、懇談・研究打ち合わせ
1月13日(土):天理大学3階第3会議室
 午前の部:司会:青山亨
 9:00-10:30 小林寧子「インドネシア・イスラーム研究とMartin Van Bruinessen」
 10:45-12:30 国谷徹:「Azmardi Azra著、The Origin of Islamic Reformism in Southeast Asia: Networks of Malay-Indonesian and Middle-Eastern 'Ulama' in the 17th and 18th Centuriesの紹介とレビュー」
 午後の部:司会:奥島美夏
 14:00-16:00 菅原由美・服部美奈:「M.Van Bruinessen著、Kitab Kuning:Pesantren dan Tarekat: Tradisi-Tradisi Islam diIndonesiaの紹介とレビュー」
 16:30-17:30 坪井祐司:「Mohd.Nor Bin Ngah著、 Kitab Jawi: Islamic Thought of the Malay Muslim Scholarsの紹介とレビュー」
 17:30- 総合討論:討論者:西尾寛治など
1月14日(日):天理大学研究棟3階第3会議室
 9:30-11:00 今後の研究活動に関する打ち合わせ
 11:00  現地解散

内容:
 東南アジアのキターブに関する研究状況を把握し、基礎的知識を共有し、それを踏まえて今後の研究の方向性を定めることを目的とし、合宿研究会を行なった。参加者が分担して以下の基本文献について報告し、議論を行った。
 1) Van Bruinessen. 1995. Kitab Kuning: Pesantren dan Tarekat: Tradisi-Tradisi Islam diIndonesia. Bandung: Mizan.
 2) M.Van Bruinessen.1990. “Kitab Kuning: Books in Arabic Script Used in the Pesantren Millieu: Comments on a New Collection in KITLV Library BKI", Bijdragen tot de Taal-,Land-en Volkenkunde van het Nederlandsch-Indie. 146(2)(3):226-269.
 3) Azmardi Azra. 2004. The Origin of Islamic Reformism in Southeast Asia: Networks of Malay-Indonesian and Middle-Eastern 'Ulama' in the 17th and 18th Centuries. Allen & Unwin, Hawaii Univ.Press.
 4) Mohd.Nor Bin Ngah. 1982. Kitab Jawi: Islamic Thought of the Malay Muslim Scholars. Singapore: Institute of Southeast Asian Studies.
 議論では、キターブ・ジャウィ、キターブ・クニン(クニンは黄色を意味するマレー語)、キターブということばが意味するものや概念が必ずしも一様ではなく、地域や時代によって異なること、研究者によっても用法が異なることが指摘され、これらの概念の明確化が必要であることが確認された。研究会後もメーリングリストで議論が継続され、インドネシアのプサントレン(イスラーム寄宿塾)で学ぶ人々の間では、キターブ・クニンは「アラビア語の宗教書古典」と認識されていたことが紹介された(小林寧子)。キターブの概念や用法については、今後さらに検討を続けることになった。
 また、以下のキターブを東南アジア各地で分担して収集することにした。①東南アジアで作成・出版されたアラビア文字現地語(ジャウィ)イスラーム書、②東南アジアで作成・出版されたアラビア語イスラーム書、③東南アジア以外で出版された東南アジア諸言語アラビア文字表記(ジャウィ)イスラーム書、④東南アジア以外で作成・出版されたが東南アジアで流通していたアラビア語イスラーム書。(川島緑)