文科省公募事業SOIAS
上智公募研究SOIAS「イスラーム社会の世俗化と世俗主義」第一回研究会のお知らせ
参加者9名
報告者:ジェイムズ・マクドゥガル
このたびイスラーム地域研究上智大学拠点文科省事業公募研究(SOIAS)では、2012年度「イスラーム社会の世俗化と世俗主義」第一回研究会として、アルジェリアをご専門とするオクスフォード大学フェローのジェイムズ・マクドゥガル氏をお招きいたします。
ジェイムズ・マクドゥガル氏は2002年にオクスフォード大学で博士号を取得し、同大学研究員(2002-2004)、プリンストン大学准教授(2004-2007)、SOAS講師(2007-2009)を経て、2009年からオクスフォード大学歴史学部フェローとして着任されました。
主著 History and the Culture of Nationalism in Algeria (Cambridge University Press, 2006)は、アフマド・タウフィク・アル・マダニー(1899-1983)の思想を軸としてアルジェリアの近代ナショナリズムを考察した画期的研究として、高い評価を得ております。他の業績には、編著としてNation, Society and Culture in North Africa (Frank Cass, 2003)、雑誌論文が多数ございます。
ナショナリズム研究にとどまらず、サラフィー主義やベルベル民族運動など現代的な問題についても活発な論考を発表しつづけているマクドゥガル氏は、英語圏におけるイスラーム地域研究・マグリブ研究をリードする研究者の一人です。氏の来日は、日本の学界にとって大きな意味をもつと考えます。
ご関心のある方は、ぜひご参加ください。
なお、市ヶ谷キャンパスはセキュリティ管理の都合上、事前に参加者名簿を提出することとなっておりますので、参加されるご予定の方は、お手数ではございますが、ご所属・役職とお名前を明記の上、7月17日朝までに上智大学イスラーム地域研究機構(ias-site[at]sophia.ac.jp)宛てにご連絡をお願いいたします。
その際、他の研究会との混同を避けるため「世俗化」の文字をどこかに入れていただければ助かります。
*****
記
日時:2012年7月19日(木曜日)15時半-18時半
講演者:Dr. James McDougall
(Fellow and tutor at Trinity College, University of Oxford)
題目:Repackaging Islam: State, capital, and ‘Muslim society’
(英語報告・通訳なし)
会場:上智大学「市ヶ谷」キャンパス 研究棟共同室601会議室
(JR中央線、東京メトロ有楽町線・南北線、都営地下鉄新宿線市ヶ谷駅 徒歩5分
または東京メトロ有楽町線麹町駅 徒歩5分)
*四谷キャンパスではございませんのでご注意ください。また、エレベーターは5階までとなっておりますので、その先6階へは階段をご利用ください。
*会場の位置・経路の詳細については、以下をご参照ください。
【地図】
郵便局は、やや奥まった場所にございますので、ガソリンスタンドと河合塾のある交差点を、それらと反対側にお入りください。
お問い合わせ先:上智大学イスラーム地域研究機構SOIAS(ias-site[at]sophia.ac.jp)
スパムメール対策のため、@を[at]と表示してあります。
【報告】
マクドゥガル氏は、アルジェリア現代史を専門とする立場から、現代史におけるイスラーム社会の世俗化・世俗主義の問題について考察を述べた。まずこれまでにイスラーム社会の世俗化について整理を行い、世俗領域の宗教からの解放、宗教の私事化、宗教の社会的影響力の低下、合理主義による脱魔術化などがあるとした。そのうえで、アジアアフリカ近現代史にとっては植民地主義の問題や、多様な政治体制があることを考慮する必要があることを指摘した。19~20世紀のイスラームは、社会分野の複雑化による新たな経験を経て、かつてより質的に新しい方法で多様化したという。
イスラームは、個人の信仰、文化慣習、公共宗教、政治イデオロギー、終末論など多様な側面を持つが、カサノヴァの言う第一の世俗領域である国家と資本が発展し、実務的・物理的な意味の「世俗化」は近代のイスラームの在り方を規定しているという。政教一致論としてのイスラームのイデオロギーは、実際には存在していなかった過去の国家を再獲得しようという試みであるが、ムスリム社会の不安はイスラームの危機によるものではなく、19世紀以来のイスラームを含む不平等なグローバル相互依存に起因するものであると再解釈されるべきだと主張した。
文責:荒井康一(上智大学イスラーム地域研究機構 研究補助員)