• ホーム
  • 概要
  • 活動報告
  • 出版物
  • リンク
上智大学イスラーム地域研究機構

 活動報告

海外出張報告(2011年12月13日~24日/トルコ)

出張期間:2011年12月13日~24日
出張者:荒井 康一(上智大学アジア文化研究所共同研究所員、上智大学イスラーム地域研究機構プロジェクトRA)」

   本出張では、親イスラーム政権下の社会変容と、政権の世俗主義に対する姿勢と社会の側(特に南東アナトリア地方)の支持構造との関係性について明らかにするため、現地における情報収集を行った。  イスタンブルにおいては、ガラタサライ地区の古書店街「アスルハン・パサジュ(Aslıhan Pasajı)」などを中心に、文献収集を行った。


Aslıhan Pasajı 10数件の古書店が並ぶアーケードが奥に続き、反対側は「魚市場」とも繋がっている

 アンカラにおいては、国家統計局(TÜIK)と国家水利局(DSİ)を訪問した。国家統計局では統計類の電子化が進展し、ここ数年に出版されたものの中にはインターネットでも公開される電子版のみというものも増加している。古い統計についてはインターネット上には公開されていないものの、統計局内では電子化された資料が入手可能であった。電子化作業は現在も推進中であるが、特に主要なものについてはほぼPDF化が既に完了していた。ここでは、選挙及び社会経済状況についての詳細なデータを入手した。国家水利局では、それほど社会経済的なデータは得られなかったものの、南東アナトリア地域開発計画(GAP)の担当者を訪問し、アドバイスを得た。


国家統計局

国家水利局

 最後に向かったシャンルウルファでは、南東アナトリア地域開発計画地域開発局(GAP-BKİ)の地域本部を訪問し、expart職のAhmet Tokdemir氏と面談した。その後、専門分野が近いと判断された同じくGAP-BKİ のexpartのHüseyin Demir氏の紹介を受けた。両氏からは、GAPの進展現状について説明を受け、灌漑の問題と今後の研究の方向についてアドバイスをもらった。また、GAP-BKİ 出版部で20冊ほどの報告書類を入手した。

GAP-BKİ地域本部。同様の建築物が20棟近くならぶ


 以上のような調査によって、以下のようなことが明らかとなった。まず、トルコの与党である公正発展党(Adalet ve Kalkınma Partisi / AKP)は、信教の自由や民主主義や保守主義を表に出す「穏健化」により、イスラーム法による統治を望まない中間的な人々や一部のマイノリティからの支持も受けるようになってきた。次に、どちらかといえば都市型の政党であった同党が、与党として実績を積むことにより地方有力者を取り込み、農村部でも動員力を増してきていた。また、親クルド政党が巧みな戦術によって議席を増やしたとはいえ、南東アナトリア地方では大規模な開発が進展しているにも拘らず、農村部では有力者の影響力がそれなりに残っていた。集団的な投票は多く見られ、部族系の議員への票も大幅に減っているとはいえない。 今後も、トルコの社会変容と、「世俗主義」をめぐる政党間の競合構造を注視しつつ、今回新たに得た資料についてのより詳細な分析を行っていきたい。

文責:荒井 康一(上智大学アジア文化研究所共同研究所員、上智大学イスラーム地域研究機構プロジェクトRA)

 




Copyright© 2010- SOIAS, all rights reserved.