Hilal Khashan教授報告(2010年1月9日/上智大学)
報告者のHilal Khashan教授が“Hizbullah’s Unfettered Righteousness: the Pursuit of a Millennial Creed”とのタイトルで報告をした。報告ではレバノンのシーア派共同体の中でのヒズブッラーの社会的基盤、ヒズブッラーの思想や活動とイランとの関係などが主な内容となった。報告者は、レバノン内戦・イスラエルによる侵攻・ヒズブッラーの結成に先立つシーア派共同体の情勢についてムーサー・サドルの活動やアマル運動との継続性を指摘した。また、ヒズブッラーが現世と来世を架橋する思想を担うことによってシーア派共同体の中で宗教的志向の強い者を構成員として獲得することに成功したと報告した。出席者との議論では、レバノンの様々な宗派共同体と国家との関係、ヒズブッラーが建設を目指していると主張する「抵抗社会」がいかなるものであるかについての指摘・質問を中心に質疑が行われた。「抵抗社会」はヒズブッラーがレバノン社会に基盤を広げようとする試みの中でカギとなる概念ではないかとの指摘に対し、報告者はヒズブッラーが法学者統治論を信奉することを通じてイランと結びついていることから「抵抗社会」についても同党がレバノン社会に独自の共同体を移入したとの趣旨の見解を述べた。 出席者は司会・報告者を含む12名。なお、報告・質疑はすべて英語で行われた。