海外出張報告(2009年3月12日~19日/インドネシア)
出張期間:2009年3月12日~19日
訪問地:ジャカルタ、ジェパラ
出張目的:インドネシア・イスラームの「世俗主義」と「イスラーム主義」を、植民地末期(1930年代)に発行された雑誌に掲載された記事、論考から検討する可能性をさぐる。主に国立図書館(Perpustakaan Nasional)で調査。合間にイスラーム系教育機関を訪問。
出張者:小林寧子(南山大学)
行程:
3月12日夜、ジャカルタ到着。
3月13日・14日 国立図書館で資料調査。
3月15日 中部ジャワのジェパラへ、ポンドク・プサントレン・ ハシム・アシュアリを訪問。
3月16日 カルティニ博物館を見学、スナン・ムリア(九聖人)の廟を見学、ジャカルタへ戻る。
3月17日 午前:シャリフ・ヒダヤトゥラー・国立イスラーム大学を訪問
午後:国立図書館で調査、ナフダトゥル・ウラマ社会調査研究所を訪問。
3月18日 午前:アル・アズハル大学(ジャカルタの私立大学)訪問。
午後:国立図書館で調査夜。夕方、帰国の途につく。
1984年に作成された国立図書館の雑誌カタログには20世紀前半にイスラーム系の雑誌が155点リストアップされており、想像以上に多く出版されていることがわかった。そのうち10数点を除き、今までの研究ではほとんど使用されていないし、また使用されたものも断片的に触れられたに過ぎない。出版地はジャカルタ(当時はバタヴィア)に特に集中するわけでもなく、意外とメダン(北スマトラ)でも多かった。しかし、インドネシア(当時は蘭領東インド)全体で見るとやはりジャワで出版されたものが大半を占める。これを、①出版された時期が複数年にわたるもの、②欠号が少ないもの、③今までの研究で言及されなかったもの、という3つの基準で選び出して概観した。
その結果、漠然とではあるが、以下のような印象を得た。
1) 最も目に付くのは改革派系の雑誌で、地方レベルで発行されている場合が多い。
2) メダン、ジャカルタ発行の雑誌には海外情報が比較的豊富である。目立つ項目は、パレスティナ問題、トルコ革命の行方である。また、1935年からは日本のイスラーム動向が写真入で紹介されているのも目立った。
3) 1920年代に使用され始めた民族運動用語、「インドネシア」の使用が一般化している。また、民族運動への関心も高い。
4) 「イスラームの中の女性」、異宗教間問題(特にキリスト教布教活動との関連)、アフマディヤ問題など、現代大きな関心事になっている問題がすでによく取り上げられている。
残念ながら、カタログにあっても実際にはすでに所蔵されていないもの、あるいはどこかにまぎれて図書館員が見出せないものがいくつもあった。今回はまだ一部しか見ることができなかったが、さらに時間をかけたサーヴェイが必要である。なお、訪問したイスラーム教育機関では、「ニーズ対応型」とも言える実践科目重視傾向が強まっているという印象を受けた。
文責:小林寧子(南山大学)