森田 直子MORITA, Naoko

  • 職位教授
  • 専門ロドルフ・テプフェール、文学と図像、比較文学

授業について

文法をひととおり学び終えた2年生向けには語学と文学研究入門の授業、3年生以上の学生さん向けには特定テーマに沿って選んだテクストを精読していく授業を担当しています。物語ジャンルの歴史や発展(それは現代のメディアコンテンツにつながっています)を考えるにあたって、取り上げる機会が多いのがペローによる文学的おとぎ話です。ペローのテクストには歴史性(ペローにとっての同時代性)と普遍性が溶け合っていて、私たちが物語に求めるものについてのゆたかな思考の糧がつまっています。フランス語の書き手たちが、それぞれの時空間から発信した言葉をできるかぎり正確に読みとり、それによって自分たちが生きている今・ここを相対化できるようになればと思っています。自分の言語感覚を総動員してぶつかってくる学生さんとのやり取りがとても楽しいです。

最近研究していること

19世紀フランス文学におけるテクストと図像の関係を研究するなかで、15年ほど前からフランス語圏スイスの作家ロドルフ・テプフェール(1799-1846)の領域横断的な創作活動(演劇・小説・アルプス旅行記・評論)、ストーリー漫画の自主製作・自費出版、その根幹にある顔やしぐさへの関心、絵画・デッサン・ダゲレオ写真・カリカチュアを連続的にとらえるアプローチなどに関心をよせて来ました。テプフェールを出発点に、最近はフランス語圏文学における歩行・徒歩旅行のテーマや、笑いを基調とするジャンルのなかでの暴力の表象について考察しています。

私のこの一枚

ジュネーヴのサン・タントワーヌ通り(la promenade Saint-Antoine)は、テプフェールが25歳のとき妻の持参金によって設立した寄宿学校があった場所で、写真の右から三軒目の背の高い建物がその跡地です(中には入れません)。もともとスイスには国際的な寄宿学校が多く、テプフェールの学校にも当時ヨーロッパ中から良家の子弟が集まったようです。寄宿生と長い時間を共に過ごしたテプフェールが1820年代の終わりからストーリー漫画風の絵物語を制作するようになったのは、生徒を楽しませるためでもあったとされています。