好奇心の赴くままに
進路区分 | 就職(企業) | ||
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進路先 | 日産自動車 | ||
氏名 | 和田 悠花 | ||
メジャー | 市民社会、国際協力論 | マイナー | 中東・アフリカ研究 |
入学 | 2020年4月 | 卒業 | 2024年3月 |
「アフリカ」を追い求めて:
私がFGSに入ったのは、アフリカのことを勉強したいと思ったことが始まりです。アフリカに関する授業を数多く履修した今となっては、「アフリカをひとまとめにするな」、という声があちこちから聞こえてくる気がしますが、今回は便宜上アフリカと言わせてください。
高校時代、留学先でエリトリア出身の難民家族に出会ったことがきっかけでアフリカに関心を抱くようになり、FGSを志望するようになりました。上智以外にもアフリカに関することを学べる大学はいくつかありますが、アフリカのみならず教育や経済、政治のことも同じ学部で学べるところに魅力を感じ、第一志望として目標を据えました。
FGSに入った当初、”アフリカの貧困、そしてその貧困問題の根本には教育制度がきちんと整っていないという事実があるのだ”と思っていた私だったので、FGSの授業も一般教養の授業もアフリカ地域に関する授業と教育に関するものをメインに履修していました。一年生の頃は必修科目も多数あるため、自由に選択できる履修可能な単位数を最大限自分の関心分野関連の授業でまとめることができましたが、2年生の秋学期にもなると、必修科目は大半を履修済み、選択可能科目も関心分野のものはほぼ履修済みとなり、一年生と同じようにはいきません。さあどうしよう、となったところで、毛嫌いしていた「経済」という言葉のついた授業のシラバスを読んでみました(その言葉が嫌いだったのは、世間知らずな思い込みとでも言ったらいいでしょうか、金持ちになるための学問だと思っていたからです)。しかし、なんとその授業は教育や貧困問題を扱う、と書いてあり自分の関心分野と合致していたため「経済」という苦手なワードがありましたが履修を決めました。講義の内容は、識字教育はなぜ重要なのか、貧困とはどういう状況のことを指すのか、国際協力は果たして現地の人々にとって本当に必要なのか、など私の固定概念を覆すような内容ばかりでした。FGSに入学した方にはぜひ履修していただきたい一科目です、国際政治経済Ⅱという授業ですので頭の片隅にでも入れていただけると幸いです。
その授業を履修したことが、私の関心を教育という分野から貧困問題の構造という経済学に引き寄せ、この授業の教鞭をとった先生のゼミに参加するようになりました。ゼミで扱う内容は、FGS生全員に対して開講されている授業とは違い、20人ほどの少人数になるためスペシフィックなものが多いです。自由貿易協定、知的財産権、公的事業の民営化、など正直今まで聞いたこともないようなワードが入った資料を読んでゼミの授業に備える必要があったため、決して楽なものではありませんでしたが、この世の中の不公平さを理解し、アフリカ含む途上国を取り巻く経済構造を学ぶことができ、今まで自分にはなかった視点で物事を考えられるようになったことが大きな収穫だったと感じています。ゼミで扱う内容は、決して全ての内容がアフリカを題材としているものではなかったですが、卒業論文はアフリカやその他の熱帯地域で蔓延する顧みられない熱帯病の医薬品アクセスに関して、知的財産権の内容を組み込んで執筆しました。知的財産権一つとっても調べれば調べるほど面白く、卒業論文だけでは明らかにしきれなかった内容もあるので、大学卒業後も知的財産権のみならず世の中を取り巻く様々な事象にアンテナを張って自分の情報をアップデートし続けたいと思います。
総じて、FGSでの4年間はアフリカを経済、教育のみならず、ジェンダー、政治、人類学、家族論に至るまで多様な面から学ぶことができ、入学当初は考えもしなかったことに対して問題意識を持てるようになり、視野が確実に広がった4年間でした。
自由を大いに活用せよ!:
高校生から大学生になることで、年がそんなに上になるわけでもないし大学生になるからといって法的にできることが増えるかと言えばそうでもありません。しかし、大きな変化になることと言えば、それは自由が増えることかもしれません。少なくとも私にとっての大学生活はそうでした。
まず、大学は高校と違って週5日もしくは6日毎日同じ時間から同じ時間まで学校にいなければならないわけではありません。自分の好きなように時間割を組むことができるので、取りたい授業がない時間帯は自由時間、つまり空きコマにできます。一年生の頃は必修科目が多かったりで週5日朝から夕方まで授業、というケースもあると思いますが、年次が上がるにつれて空きコマは増えて行くと思います。その時間帯は自己研鑽に励んだり、バイトをしたり、友人との時間にしたり、など自由に使える時間です。私は9庭(上智大学内の一施設)でガールズトークに花を咲かせたり、一コマ授業を受けてその後アルバイトに行ったり、語学学習をしたりなど好きなように時間を使っていました。また、上智大学は校内で様々なイベントをやっているので、そういったものに参加することも良いと思います。私は在学中にクルド人に関する映画、ジェンダーに関するトークショー、日本社会が抱えるイシューに関するトークショー、日本に暮らす移民に関するトークショーなどに参加しました。これらは全部が自分の関心分野であるアフリカや経済などとリンクしているわけではありませんが、全部自分の中の「面白そう」という直感で参加しました。情報に目を配ることは自分の世界を広げることにも繋がると思うので、SNSや大学校内の掲示板を随時確認してみてください。
さらに、もう一つ大学生の自由を象徴するものとして長期休みが本当に長いということがあります。夏休みと春休みがどちらも2ヶ月程度ずつあるので、自分の好きなことに自由に時間を使えます。アルバイトに打ち込む、関心分野をさらに追求する、行ったことのない地域に行く、何でもできます。私の大学生活の最初の2年間は、コロナ禍ということもあり外出することが難しかったため、アルバイトに精を出し自分で自由に使える資金を蓄えました。少しずつコロナも収束に向かいつつあった三年の夏休み、こんな長期間で休みを取れるのは大学を卒業すると滅多にない、それならば今だからこそ行けるところに行こうと思い、アフリカの中心に位置するルワンダに1ヶ月渡航しました。振り返ってみると、今だからこそ、というよりは、アフリカの勉強をしているのに自分の五感で感じずに大学を終えるのは勿体無い、という気持ちと単純にアフリカに行ってみたい、という好奇心が大きかったなと思います。1ヶ月間の滞在でスラムや農村に行ってそこに暮らす人々の生活空間をのぞいて実際に一晩彼らと衣食住を共にしてみたりなど、大変有意義な経験ができました。ここで私が皆さんにお伝えしたいことは、「とりあえずやってみる」という気持ちを大事にしてほしいということです。2ヶ月という長期休みがあるからこそできることがきっとあるはずです。少しでも気になったことがあれば、生命の危険がない限りどんなことでもどんどん挑戦していただきたいです。経験して失敗しても、それは大きな学びになります。失敗を楽しむ、というマインドで貴重な4年間の大学生活を実りあるものにして欲しいと思います。
FGSを目指す皆さんに伝えたいこと:
FGSが第一志望の人もそうでない人も、受験勉強を大学に入るためだけの勉強ではなく、大学に入った後の教養を深める土台形成と捉えていただきたいと思います。私自身、受験勉強を受験合格のためにだけというマインドでやっていたため、大学入学後の講義に出てくる世界史の出来事を「なんかあったな、そんな条約」ぐらいでしか認識できず何度も高校時代の世界史の教科書を読み返しました。皆さんにはそうなってほしくないので、私を反面教師として受験勉強に励んでいただけたらと思います。
そして、FGSを第一志望にしている皆さん。FGSで学びたいことがざっくりとでも決まっている人も、そうでない人も、最初はFGSで開講されている授業を好き嫌いなく履修してみてください。今までの関心をさらに深めようと再認識できるかもしれないし、教育から経済に心移りした私のように今まで思ってもみなかったような領域に関心を抱くこともあるでしょう。どちらにせよ、FGSではグローバルイシューを実に様々な側面から覗くことができるので、FGSだからこそ学べる分野をぜひ追求してみてください。余談ですが、私は卒業直前の4年の秋学期に北朝鮮の国際関係に関する授業を履修しました。大学生最後の時期にして、ヴェールに覆われている国の内部のことを少しでも知ることができてよかったと思っています。
大学生になったらやりたいことが沢山あると思います。それらの楽しみを胸にそこまでの旅路となる受験勉強をも楽しんでいただけたらと思います。
皆様のご健闘を心からお祈りしております。