進路

『抽象的な学びから、自分の生へ繋がる』

進路区分 就職(企業)
進路先 社会福祉法人 晴山会
氏名 藏内 靖恵
メジャー 市民社会・国際協力論 マイナー アジア研究
入学 2016年4月 卒業 2021年3月

内定先を選んだ理由:

 私は3年次以降、市民社会論を中心に学びました。性暴力への抵抗活動に参加したり、被害経験者の声を聞いたりし、草の根での連帯の力強さと尊さを目の当たりにしました。そして、社会を構成する1人1人の人生に、より丁寧に、実践的に向き合いたいと感じました。そこで福祉の現場に興味を持ちました。
介護士は、まさに生活を直に支える仕事です。きっと「人を支える」というのは理想論で済むものではなく、頭も心も身体も使う、とても難しい仕事だと思います。職場の先輩方は「根拠は大切。だけど正解の無い仕事」とおっしゃいます。また面接では「ご利用者様と、永遠を生きる仕事」だと言われました。私は、死というリミットを目指すのではなく、今ここにある生活を大事にしていく、という意味だと思っています。厳しいけれど、生きることと真摯に向き合える仕事だと思います。

学生時代を振り返って/FGS で何を学んだか/学んでよかったと思うこと:

 高校生の頃は、無自覚の内に社会問題を「上から目線」で捉えていました。誰かが解決する他人事だと考えていたし、抜本的な解決策でなければ行動する意味がないと思っていました。
今では、私自身が社会の当事者であり、かけがえのない市民の1人であると強く自覚しています。それは、大学内外の講義、書籍、シンポジウムを始め様々な被害経験や先人の意見に耳を傾ける機会が多かったからだと思います。知識や学問というのは、冷たいものではなく、生身の人間の経験や思索から生まれているんだ。そう気付けたらあらゆる学問が面白く感じられましたし、自分自身や近しい人の尊厳についても深く考えるようになりました。その結果、社会運動に参加する勇気を持ちました。そこでは仲間と連帯し抵抗することで社会を少しずつ変えられる、自分も変わっていけるという実感を得ました。日々の生活で悩む時も、希望を捨てず、変化を恐れない姿勢が活きています。

FGS を目指す皆さんに伝えたいこと:

 社会問題や自分自身について、頑なに「こうあるべき、こうしなければ」と考えることもあるかと思います。例えば、自身の志望動機を模範的に述べなきゃ!と思う方もいるかもしれません。あるいは、ご自身や近しい方がすでに困難な状況にあれば、社会を変えることへの使命感で息苦しくなるかもしれません。
私が FGS に入ってよかったなと思うのは、「こうしないと」と決まっているものは本当はとても少ないのだと、気が付けたことです。例えば、大学以外の場所で学問や運動を深めている人々がいます。行政や国連の機関に必ずしも属さずとも、社会を変える手段はあります。学歴や労働環境によって不利益を被り、苦しむ人々は沢山いますが、そうした人々の人生は他人に「可哀想」と言われるべきものではありません。
せっかく入学できたら、自他の痛みや苦しみを不用意にジャッジせず、まずは素直な感覚で受け止めてほしいです。
ただし、感じることと、考え行動することは少し異なると私は思います。「分からないから」と言って何もアクションをしないのでは、今渦中で闘っている人々は永遠に孤独のままです。差別や暴力に立ち向うとき、仲間がいるというのは本当に力になります。差別や暴力について「中立」は存在しません。
分からないこと、複雑なものを放棄したり単純化したりせずに、複雑なままに受け止め、その上で自分なりの立場を決めて生きていこうという姿勢が、FGS で得られたら良いなと思います。
しかし何より、みなさんが学部や大学だけに縛られず、自分自身を大切にして、健やかに過ごしてくださればと思います!

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