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☆研究活動記録 「美しい街の背後の政治―シンガポール」岸川 毅

2014年03月28日

美しい街の背後の政治―シンガポール

 

総合グローバル学部  岸川毅(比較政治学)

 

安全、豊かさ、平等、自由、どの価値に重点をおいて国家体制を築くのかは国によって異なりますが、どのような目標を追求するにしても、グローバル化の進む今日、政府のリーダーシップや政策すなわち対応力がますます問われるようになっています。まもなく独立から50年を迎えるシンガポールの政治史は、厳しい国際環境のなかで「生き残り」を掲げる人民行動党(PAP)の政府が、世界最高水準の豊かさを達成するという成功物語ですが、どの価値を追求し、どの価値に制約を加えるか、明確な優先順位がつけられています。

 

PAP政府は、国の発展には強い政治的意思に加え、強制や懲罰が不可欠と考えます。国民の9割以上が持家(その大半は公団住宅)に住むという素晴らしい成果は、強制的な貯蓄制度によって実現しました。交通渋滞の少なさには、容易には自家用車を持てないほどの高い税金や諸費用が関わっています。国民の生活は保障されますが、人口540万人のうち150万人以上を占める外国籍の労働者はその枠外です。社会生活は秩序を乱す者への厳しい罰則や罰金で満ちています。選挙も野党もありますが、政府に逆らう勢力は、名誉棄損や些細な手続的過誤を理由に訴えられ、必ず政府寄りの判決が出ます。

 

そんなシンガポールで20年以上野党が勝ち続けているホウガンという選挙区があります。スラムになっても良いのかと与党に脅されながらも、労働者党(WP)に票を投じ続け、2年前の補欠選挙でも圧勝しました。なおWPは先の総選挙で史上最多となる6議席を獲得しましたが、それでも総議席の1割に達しません。ホウガン地区では公団住宅のエレベーターや通路の補修などインフラ整備が後回しにされているとの苦情が絶えません。野党への締め付けも相変わらずで、今年1月、無許可で見本市を開催したとしてホウガンを含む野党自治体が国家環境局に訴えられ、WPの議員が法廷に召喚されました。

 

しかし選挙の季節でない日常のホウガンは、シンガポールのどこにでもあるような、静かで平和できれいな団地の町です。午後のショッピングセンターには学校帰りの中高生が楽しげに集っています。公団住宅の中の補修の程度までは分かりませんが、いずれにせよ豊かなこの国でスラムというのは大袈裟な表現なのでしょう。しかし、ホウガン駅の周辺には、なぜか広大な芝生の空き地がいくつもあります。すべてに「国有地」の看板が立ち、「Land reserved for future development」とあります。これも、野党に票を投じるかぎり開発はお預けというメッセージなのでしょうか。

 

シンガポール1

シンガポール2

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