留学・国際交流

「タンザニアでの教育支援活動を経て学んだこと」

参加学生氏名:
大塚 雅楽
メジャー:
中東・アフリカ研究
入学年度:
2018年度
渡航年度:
2019年度春学期休業中、2019年度秋学期休業中
種  類:
ボランティア
渡航先国 :
タンザニア
企業・受入先:
ASANTE PROJECT

私は FGS の授業をきっかけにアフリカ地域に関心を持ちました。それまで私にとってアフリカは他の地域と比較して勉強する機会が圧倒的に少なく、物理的にも心理的にも遠い地域でした。
しかし FGSの授業を通じて、歴史、政治、経済、文化、ジェンダー、開発といった多様な観点からアフリカ地域を学ぶうちに、いつか現地へ足を運んでみたい、自分の目で現地に存在する課題を確かめたいという想いを抱くようになりました。そこで渡航できる手段はないかと探したところ、学内でタンザニアの未就学児へ教育支援を行う学生団体 ASANTE PROJECT と出会いました。
ASANTE PROJECT はタンザニアの子どもたちが義務教育からドロップアウトしてしまうという事態を防ぐべく、現地のニーズを最優先に将来性のある支援を行うことを目指す団体です。私は「学生の力で社会に変化をもたらす」という団体の理念に惹かれ、入団を決意しました。ASANTE PROJECT は、年に2回、長期休業中に現地へ渡航し、授業サポート(先生のサポートに徹し、児童がより快適に授業を受けられる環境を整える)、物資支援(協賛や寄付でいただいた物資や現地の文房具市場で調達した筆記用具を届ける)、建設支援(幼稚園を運営する上で必要な政府の認可を得るために教室やキッチンといった学校設備の建設をサポートする)を実施しています。

私は大学2年生の春学期休業中に初めてタンザニアへ渡航しました。渡航に赴く前、FGSで開講されるアフリカ地域の授業をいくつか受講し、多様な視点からアフリカを学んできたつもりでいましたが、やはりどこかで一般的に想像されやすい「貧困」や「紛争」といったイメージを抱いており、緊張と不安の中初めて現地に足を踏み入れました。しかし空港に到着しバスで少し移動するとすぐに、ところ狭しと並ぶ露天商やそこに密集する人々が目に入り、初めて目の当たりにした活気の溢れた街なみに圧倒されました。さらに活動をサポートしてくださる現地の NPO 団体の方々は長旅に疲れた私たちを温かく迎えてくださいました。心のどこかで抱いていた固定観念とは裏腹に、とても魅力的な地域であること痛感しました。

一方で、国の成長の土台となる教育分野での課題は依然として沢山存在していることも事実でした。ある支援校では推定3歳から6歳までの児童がみな同じ教室で勉強し、それを一人の先生が順番に指導していました。年齢ごとにクラス分けされた児童を複数の先生が指導する日本では見受けられない光景です。また、お金が足りずに制服や文房具を買うことができない子どもたち、20人以上の園児が走り回るには狭すぎる園庭、お弁当が足りない子に当たり前のように限られた自分の昼食分ける子どもたちなど、幼稚園で目にするどの瞬間も私にとっては初めて目にする光景でした。

ある支援校では子ども達の教育環境向上のため、教室とオフィスの建設工事が行われていましたが、先生の資金不足により工事が中止されている状態でした。石や鉄骨といった使用途中の工具がいたるところに置いてあり、非常に危険でいつ大きな事故につながってもおかしくありませんでした。
そこで私たちは半年間かけて準備した教室建設プロジェクトを渡航中に実施しました。しかし、異国の地でスムーズにプロジェクトを実施することは決して簡単なことではありませんでした。建設初日から連絡を取っていた作業員が現場に訪れず、急遽代わりの作業員が建設を担当することになり、不安のもとに教室建設がスタートしました。さらに建設に必要な材料を購入する際、レシートを発行しない文化や現地の作業員との値段交渉に対応することができず、予算を急遽変更せざるを得ませんでした。
文化や価値観の異なる方々と円滑なコミュニケーションをとることの難しさや私たちが普段感じている当たり前はどこへでも通用することではないということを自分の経験を通じて身に染みて実感しました。幸いトラブルが続きながらも 3 週間の滞在中に教室建設を無事に完遂させることができました。以前は小さくて暗い教室でしたが、広くて明るい教室が完成し、より良い学習環境を整えることができました。子どもたちも新教室の仕上がりにとても満足してくれました。満面の笑みで新しい教室を走り回る子どもたちを目にした際には、無事に建設が終えられてよかったと安堵感を抱きました。

タンザニアへの渡航は、将来もアフリカと関わり続けるという目標を掲げる大きなきっかけとなりました。実際に現地へ赴き、現場のニーズを自分の目で確かめ、現地の方々と一緒に課題を解決するという経験は私にとってかけがえのないものでした。そしてそれはこの先の将来も同様に挑戦し続けたいことでもあります。大学卒業後は大学院への進学を予定しています。学部に引き続き、関心のあるテーマであるアフリカ政治の研究を続けるとともに、行動することを恐れずにさらなる経験を積み重ねていきたいと考えています。

FGS を目指す皆さんに伝えたいこと

FGS に入学してから4年間の学生生活を終えて、本当にたくさんのものを得ることができました。
FGS では紛争、移民、政治、経済、教育、市民社会、国際協力など様々な分野から世界を捉えることが可能です。また対象地域も幅広く、自分の関心のある地域を選択し、とことん追求することができます。複合的な視点から世界を捉えることができることが FGS の最大の良さだと思います。

またFGSには同じような志を抱いた仲間がたくさんいます。国際社会が直面している課題に関心を持ち、行動することを恐れずに挑戦し続ける学生と一緒に学ぶことは、とても大きな刺激になると思います。私自身、FGSに入学して大きく成長することができました。FGSに入学した際には、ぜひ失敗を恐れずに様々なことに挑戦してみてください。

新しい教室で寝転ぶ子どもたち

現地作業員と材料を購入しているときの様子

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