科学技術の発展は人々の暮らしを豊かにする一方、国と国との力関係を変える原動力にもなり、時には戦争のあり方を一変させるなど、国際政治に無視できない影響を及ぼしてきました。安全保障政策の観点からは、一義的に国家の安全や国際秩序の安定に資するよう、科学技術の利用や管理が模索されるようにも思われがちです。しかし当然ながら、すべてのアクターが同じ価値観を共有して行動するわけではありません。実際には、他国との利害調整はもとより、国内でも経済・産業・学術といった分野を含む現行の利害構造や社会規範との折り合いをどのようにつけるのかといった問題に直面します。現代の安全保障を理解するには、国家間の軍事的対立を考えるだけでなく、こうした多様多層な政策領域・ステイクホルダーの関与をふまえつつ思考することが重要です。目まぐるしく動いていくトピックであり、歴史的に研究蓄積のあるトピックでもあり、関心の置きどころによっていろいろな切り取り方ができるはずです。みなさんと議論を深めていけるのを楽しみにしています。