5月23日(金)に、FGSワークショップ「どこに現地体験の面白みはあるのか?―ウクライナ問題を題材に―」が開催され、総合グローバル学部の1年生を中心に50数人が参加しました。
FGSワークショップは、通常の授業とは別の形で、大学院生を含む諸分野の専門家から、現地調査や現場での活動体験を聞く機会として企画・開催されるものです。
第1回となる今回は、外国語学部ロシア語学科出身で、現在大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程で旧ソ連西部におけるロシア系住民居住地域の分離独立問題を研究している松嵜英也さんに、ウクライナ問題についてお話しいただきました。
松嵜さんの主な研究対象は、ロシア系住民居住地域が事実上の独立国家を形成している沿ドニエストル共和国で、ウクライナをひとつの拠点として研究を進めていますが、この春に調査のためにキエフに滞在した際に、クリミア危機が発生し、紛争に関わる現場のひとつに居合わせることになりました。若手研究者のこの貴重な体験と分析を聞くことが今回の企画の目的です。
ワークショップの前半は、現場の雰囲気を伝える写真をまじえながら、クリミア危機の背景と経緯の説明があり、また現地で接したウクライナの人々の声―ウクライナ軍兵士として従軍している娘を心配する父親、日本の北方領土もロシアに奪われるとのプラカードを掲げる女性、ウクライナ大統領の承認がなければ、帰属替えについてのレファレンダムの結果は正当なものと認められないと直前まで信じていた学者など、様々な思いも紹介されました。
クイズ形式で進められた後半は、この問題について各国・地域(キエフ、クリミア、米国、ロシア、日本)の新聞がどのように報じたのかを見ながら、立場の異なる報道が錯綜する様が紹介されました。
我々が日々接することのできる日本語や英語の報道に加え、それらとは全く異なる内容が、ロシア語メディアや、インターネットでは入手できない現地の印刷メディアで展開されていることも明らかにされました。
今回多数の参加者を得たことは、FGSとしてはうれしい限りです。
昼休みの開催であったため、前後に授業の入っている人も多かったようで、質疑応答や議論の時間があまり取れなかったのが反省点でした。こうした点は今後の企画で改善を図っていきたいと思います。
FGSでは今後もこのような機会を設けていきます。学生の皆さんの積極的な参加を期待しています。