「Hook’em! テキサスで過ごした素晴らしいセメスター」
私は高校時代、ドイツに 1 年間留学していました。その時は漠然と、「今はヨーロッパに足を伸ばし、英語以外の言語や文化に触れてみたい」と考えていました。実際、ドイツの片田舎で過ごした日々は私にとって素晴らしいもので、今の私を形作る大きな一つの転機となりました。当時、大規模な難民流入という未曾有の状況に面していた欧州を目の当たりにしたことで、もっと国際問題について学びたいという意識が芽生え、FGS を志望し入学しました。FGS で授業を履修するうち、国際政治的観点から国際問題について分析する楽しさを知るうち、海外で、それも国際政治という分野の本場であるアメリカで、より大きなチャレンジをしてみたいと感じました。
そうと決まってからは、大学主催の留学説明会に出席し、必要な書類やテストスコアなどについてリサーチを始めました。テストスコアなどについては、外国語として開講している TOEFL 対策講座などの語学科目を履修するなどして準備を進めました。留学先は所持しているスコアの範囲で行けそうなアメリカの大学全てに希望をだしました(笑)。その中で縁があったのが、パブリックアイビー(公立大学でアイビーリーグと同等の教育を受けられる大学)の一つである、University of Texas at Austin という大学でした。
大学が決まってからお世話になったのは、「留学カウンセラー」と「グローバル教育センター」の方々です。手続きについて質問や問題があったりしたとき、親身に相談に乗ってくださったことで、大きな不安なく渡航を迎えることができました。勉学については、それまでメジャーを国際政治、マイナーはヨーロッパ研究としていましたが、アメリカ研究などの科目にも手を伸ばすようになりました。
留学先について真っ先に感じたのは、そのスケールの大きさでした。日本と比べると、まさに「段違い」。テキサスという土地柄もあり、敷地面積は 40 エーカー(約 16 万平方メートル、東京ドームおよそ4個分)と非常に広いうえ、設備は多岐にわたって充実していました。何か新しいことに取り組む際のハードルが非常に低くされており、私自身も日本であまり馴染みのなかったジムトレーニングに挑戦し、授業のあとのリフレッシュとしてよく利用していました。また、24時間営業の大きな図書館、ライティングの添削カウンセラーなど、学びの面でもサポートしてくれる設備が整っていました。
学業、特に授業に関しては、当初の目標通り国際政治に関わる授業を中心に履修しながら、Public policy などの、いわゆる政治学的な授業も履修していました。中でも強く印象に残っているのは、東アジアについて研究する授業でした。日中朝鮮についてテキストやディスカッションを交えながら進める授業で、FGS で学んだ外交政策や国際政治の基本的な理解が役に立っただけでなく、アメリカという日本にとって重要なアクター側から見てどのように映るのか、そういった理解が深まった良い機会となりました。
学外の活動では、やはりカレッジ・フットボールが非常に印象的でした。BIG12 と呼ばれる強豪の一つである UT は、学内にホームスタジアムを擁しています。週末になると学生だけでなく地域のファンがこぞって応援に向かい、ホームカラーである Burnt orange に包まれて熱狂するのが風物詩でした。
金曜日に行われるバイブル・スタディによく出席していました。初めは友人に誘われるままに覗きにいく程度でしたが、コミュニティの温かさに触れるうち、友達に会いにいくだけではなく、バイブルスタディそのものに対する熱意も自然と高まっていきました。日本では宗教・神という概念に対する距離を置いていたことが当たり前でしたが、アメリカではもっと宗教を身近なものとして感じることができました。上智大学はキリスト教を礎とする大学で、一年次にキリスト教に関する講義を履修しますが、そう言った講義とはまた違った面白さに気づいたと共に、視野が広がった気がします。
それ以外にも得たものはたくさんあります。今まで何かに急かされるように日常を消費し、友人と遊ぶことで楽しみを補給するような生活をしてきました。しかし、帰国する時には意識が外向きになり、本当に楽しいと感じられる学びを得ました。たったワンセメスターしかいられないことを後悔し、寮が閉まるギリギリまで滞在していたのは今でも思い出深いです。テキサスの人々のおおらかな気質や、10月まで半袖でいられる温暖な気候、そして海外の大学でしか味わえない独特の刺激。本当に濃密なセメスターでした。
私は、この学部の「グローバル」という面に魅力を感じて入学を決め、その過程でさらに留学、とステップを踏んできました。今までの 4 年間の経験を総じてこれからについて述べるとすれば、やはり私の目標は「世界をまたにかけて仕事をする」「世界と日本の架け橋になる」というものです。漠然としてはいますが、どんな形でも世界を繋ぐ一員としてこれからの人生を歩んでいきたいと考えています。 そして、留学生活で改めて実感した言語習得や膨大な学習量の積み重ねの重要性、ひいては大学生活で経験した全ての困難や課題を乗り越えた経験が、それを可能にしてくれるという確信が私にはあります。
最後に私がお伝えしたいことは、大きく二つあります。 一つ目は、この学部には選択肢がどこよりも多く存在する、ということです。国際系の学部は様々ありますが、その中でもトップクラスの自由度があると他の大学に通う学生の話を聞いて感じます。メジャー・マイナーの組み合わせが自由なだけでなく、必修科目が他の学科よりフレキシブルである点は、私自身学生として非常に恩恵を受けた点でもあります。また、学部内にとどまらず、マイナーとして外国語学部の科目をマイナーとして設定、履修できることをはじめ、海外での経験を積む機会や、自分が好きなこと、やりたいことにいつでも挑戦することができる環境は、本当にユニークです。
二つ目は、その選択肢が多いからこそ、正解の道を選ぶのではない、選んだ道を正解にする努力こそが大切になる、ということです。私は、後天的に語学を習得したセミ・マルチリンガルです。もともと英語ができたわけでも、ドイツ語にゆかりがあるわけでもありませんが、そういった国へ旅立ち、多くの経験を得ることができました。そこで気づいたのは、何をするにも大変なことはついてまわるが、努力抜きにして大きなやりがいや達成感は得られないということです。言語の壁があるからこの選択肢は効率的でないのでやめよう、ではなく、むしろその先にある自分の姿を夢見てどんな選択肢もフラットに捉えて欲しい。そして、選んだ道に自信を持って突き進んで欲しいです。
FGS にも交換留学先にも、その道を極めた素晴らしい教授の方々がいらっしゃいます。あなたが学びたいと思うことをどこまでも深められる環境が整っています。せっかくですから、後悔を恐れるよりも、これだと決めた道を突き進んでください。振り返ってみれば、「進んで良かった」と思える道がそこに続いているはずです。