「百聞は一見に如かず」
渡航前
私は大学内の国際協力団体「めぐこ」―アジアの子どもたちの自立を支える会―に所属しており、途上国(インド・フィリピン)の教育支援に携わっていました。夏にはスタディーツアーという形で実際にフィリピンを訪問し、子どもたちや現地で教育支援に関わる方々との交流を経験してきました。また、3年次に団体の代表を務めたことで、NGO の運営や具体的な業務により関心を持つようになりました。
一方総合グローバル学部では、アジアや教育支援だけにとどまらず、様々な地域の様々な課題について幅広く学んできました。その中でも、大学1年次に読んだ本がきっかけで難民問題、特に中東のシリア難民について詳しく学びたいという意欲が徐々に高まっていきました。2011 年のシリア内戦勃発から現在まで続くシリア難民問題は、最新の情報・数字が日々アップデートされている反面、未だ有効な解決策を打つことができていない現在進行形の課題です。3 年次には、最新の調査結果などを追っているうちに、どのように研究していけばよいのかという壁にぶつかってしまいました。
そんな時、国際協力団体に所属していた経験を活かして、難民支援の最前線に行き、難民支援に携わってみたいと思うようになります。様々な選択肢を検討し、難民支援の活動をしている日本のNGOで、海外インターンとして働かせてもらおうと考えました。そこで、ゼミの指導教授はじめ総合グローバル学部の教授のお力を借りて、中東地域に詳しいジャーナリストの方や、ボランティアを受け入れているNGOの担当者の方とお会いしながら、お世話になる NGO・渡航先を検討し、レバノンで難民支援を行う NGO で半年間インターンをさせていただくことに決まりました。そのNGOの活動理念に共感したのも大きかったですが、レバノンでは英語を話せる人が多いこと、事業の一つに教育支援があり自分の学生団体での経験を活かせることが最終的な決め手となりました。
渡航中
現地では、首都ベイルートに構える事務所でデスクワークをし、週に 1 回程度難民キャンプを訪問しモニタリングを実施していました。私はインターンとして、基本的にはすべての仕事のお手伝いをしました。事務所の会計管理や広報活動のための記事の作成から、キャンプ訪問時写真撮影、難民への聞き取り調査のメモなどが主な仕事です。キャンプにある教育センターでは子どもたちと交流することも。自分が一から企画・提案した体を動かすプロジェクトに予算を割いてもらい、実際に子どもたちを呼びアクティビティを開催することも経験できました。
また業務外の時間でも、国内各地を旅行したり、レバノン人の友人と日本語劇に挑戦したり、難民の子どもたちと毎週サッカーをしたりと、新たな環境に積極的に挑戦しました。
その一方で、難民問題の難しさにも直面しました。障がいを持った難民を目の前にして何もできない無力感、受け入れる側であるレバノン人によるシリア難民への差別、内戦開始から 10 年が経つ現在も厳しい環境に置かれる難民の生活。これらは論文やデータの中では知っていたけれど、実際に足を運んでこの目で見ない事には理解が難しいのだなと感じました。
帰国後
日本ではシリア難民のことがメディアにあまり取り上げられていないという現状があるため、関心を持ってもらう機会がないのではと考えました。そこでNGOと上智大学と合同でセミナーを開催し、その中で自分の見聞や学んだことを発表する報告会を実施しました。その後NGOの東京事務所でもインターンとして働き、事業の最前線である現地事務所とバックアップの本部事務所の両サイドから、NGO の活動について学んでいます。ゼミでの研究テーマも、レバノンへの渡航をきっかけに方向性を絞ることができました。
また、レバノンについて日本人の多くが「カルロスゴーン」のイメージしかないという状態を変えるため、レバノンという国を知ってもらうためのオンラインイベントなどに登壇しました。レバノンで 2020年8月に大規模爆発が起こった際には、友人と一緒に寄付を募るためのサイトを立ち上げました。
FGS を目指す皆さんに伝えたいこと
私は国際協力の学生団体や NGO でのインターンなど、多様な活動をしてきましたが、だからといって高校生の時から広くアンテナを張っていたわけではありません。サッカーのことばかり考えていました。それでも大学に入ってからの一つ一つの選択の積み重ねで、今の自分があります。
大学生は高校生や社会人と違い、自由に使えるお金と時間があることが強みです。また、大学は関心を持ったことを好きなだけ追いかけることができる場でもあります。世界中の出来事を知るために常にアンテナを広く張っておく、そして思い立ったら即行動し、積極的に様々なことにチャレンジすることで、自分の関心だけでなく、将来の道が開けてくると思います。