留学・国際交流

「中国語初心者の台湾留学」

参加学生氏名:
宇田川 めい
メジャー:
中東・アフリカ研究
入学年度:
2017年度
渡航年度:
2019年度秋学期~2020年度春学期
種  類:
交換留学
渡航先国 :
中華民国(台湾)
企業・受入先:
國立臺灣大學 National Taiwan University

私はFGSの様々な講義を通して、LGBTIQ+などのジェンダー論に関心を抱くようになりました。ジェンダーに関する文献に触れ始め、様々な性を生きる方々との出会いを経験していた大学3年次(2019年)、台湾がアジアで初めて「同性婚」を認める法案を可決したというニュースを見聞きしました。それまで同性婚の承認は、欧米が先行して行なってきたものでしたが、台湾が大きな一歩を踏み出したことで、他の国々に対して「性の多様性」を認めていくという強いメッセージを与えました。そして、私はこのニュースをきっかけに台湾の國立臺灣大學(National Taiwan University)へ留学することを決めました。

國立臺灣大學は、英語圏の協定校として記載されていますが、公用語は中国語(台湾華語)です。私は高校時代に少しだけ中国語を学んだことしかなかったので、言語の壁にぶつかることを承知した上で、事前準備を進めていきました。

渡航前は中国語の単語帳を見ながら、臺灣大學の HP や上智大学が公開している帰国者レポートを参考に、現地で履修可能な講義をまとめていきました。その時に臺灣大學には、留学生も履修可能な英語開講科目が多く設けられており、ジェンダーに関する講義も英語で開講されていることを確認しました。そして自分の関心の高い講義を履修できるか否かを基準にして所属する学部を選択しました。また留学するために必要となる書類などの準備は、上智大学の留学渡航者向けのガイダンスに参加し、説明を受けながら同時進行で行いました。
渡航する国や大学ごとに書類が異なってくるので、不明な点が見つかった際には、学事センターへ直接質問に行き、手厚いサポートをしていただきました。多くの方々のおかげで念願の交換留学が実現しました。

そして、大学3年生の夏にいよいよ留学が始まりました。何度か旅行で訪れていた台湾ですが、いざ生活が始まると挑戦の毎日です。まずは言語の壁です。当たり前ですが、大学の外では中国語で生活するので、スマホの辞書を片手に会話を試みていました。中国語は思った以上に発音が難しく、言葉だけでは伝わらないことがほとんどなので、メモに書き出したり、ジェスチャーをしたりと必死な毎日でした。そんな私に対して台湾の人たちはいつも暖かく接してくれました。中には親切にゆっくりと中国語の発音を教えてくれる方もいました。

最初は言葉が伝わらず落ち込みましたが、たくさんの人の暖かさに触れるうちに、中国語での会話が楽しくなり、自分から進んで中国語を話すようになりました。そんな生活に少しずつ慣れて来た頃には、台湾大学の学生と言語交換をしたり、旅行サークルに参加したりして、自分から中国語に触れる機会を作るようになっていました。

一方、大学では英語の講義を中心に履修していたので、頭の中は英語一色に染まります。講義には少人数でディスカッションを行う機会が多く設けられており、積極的に発言をせざるを得ない環境に置かれます。最初は英語のディスカッションを難しく感じていましたが「女性與臺灣社會(Women and Taiwanese Society)」という講義でジェンダー問題に関してディスカッションしたときに初めて意見を述べることができ、皆が意見を返してくれたので自信を持って話せるようになりました。

またディスカッションのメンバーで協力して書き上げるレポート課題が課されることもあり、授業外でも他の学生と繋がりを持つことが出来ました。振り返ってみると、私のいた環境はほぼ日本人学生がいない、そして欧米からの留学生がほとんどという環境だったので、頭が英語漬けになれる恵まれた環境でした。講義を通して英語でのディスカッションを何度も経験したのち、英語の腕試しをしてみたいという思いから、台湾の会社にインタビューをしに行ってみました。インタビューを引き受けてくれた会社は各国のLGBTIQ+をテーマにした映画作品の配信サービスを行っており、映画を中心としたメディアからLGBTIQ+への理解を広めていくことを目指しています。インタビューの内容は、主に 2019 年の同性婚承認に至る過程と、日本のLGBTIQ+のこれからの二点でした。事前に調べた情報を基に話を聞かせていただき、講義やニュースでは中々触れることのない台湾のLGBTIQ+の現状などを教えていただきました。私の英語は完璧ではなかったものの、インタビューに挑戦できたことと、そこから新しい学びを得られたことがとても嬉しく、最初の一歩を踏み出すことの大切さを知りました。

留学が始まった当初、頭の中で中国語と英語と、日本語の切り替えをするのは本当に疲れましたが、渡航から1ヶ月が過ぎた頃には、中国語でつまずいた時には、口から出す言葉を英語に切り替えたり、その逆を行ったりして、自分のペースで生活を送れるようになっていきました。所属していた旅行サークルでは、中国語がわからない時には、友達と英語でコミュニケーションを取ることができ、言語の使い分けがすごく便利に感じられました。英語に自信がつき、中国語の楽しさを知ったことで自分の挑戦の幅が広がったのだと思います。

これは旅行サークルで外傘頂洲に行ったときの写真です

日常生活における中国語のやりとりが苦じゃなくなったのは、留学生が必ず履修しなければならない「國際生華語(General Chinese)」という少人数制の中国語の授業のおかげでした。私は中国語のプレイスメントテストができなかったので、初級クラスに振り分けられました。私以外の日本人学生は皆、中国語学科や、第二外国語の履修者だったので、上級クラスへ振り分けられていました。留学前からこの状況は覚悟していましたが、正直最初は悲しかったです。

しかし、私にとって初級クラスの仲間との出会いが沢山の学びを与えてくれました。私の中国語のクラスメイトは、スペイン、タイ、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ、チュニジア、日本出身と非常にグローバルでした。全員とても気さくで仲がよく、外でランチを食べたり、休日には観光に行ったりしました。学期末には先生を含めた皆で打ち上げをするほど仲の良いクラスでした。

中国語のクラスメイト達とハロウィンパーティーをしているときの写真です

個性豊かなメンバーと過ごす日常の中で、私が気づいたのはクラスメイトたちが、私と似たような目的で台湾に留学をしているということでした。出身国が性の問題に対して閉鎖的だから台湾に来たという人もいれば、アジアや西門(台湾の渋谷)の LGBT 文化に関心があるから台湾に来たという人もいました。そんな仲間と過ごす日常には、性について身近に考える機会が沢山ありました。気付いたら中国語の授業中に皆がオープンに性を語り、先生も会話に参加することが当たり前の光景になっていました。この感覚は、日本では未だに中々経験できないものだったと思います。

正直、最初は公の場で「性」に関する話題を口にすることに対してタブーな感覚を抱いていましたが、皆の明るいオープンさに触れることで、次第に私自身の常識や価値観の存在に気づきました。その気づきから、自分の価値観にとらわれずに、中立的な視点を持つことに今まで以上に気をつけるようになりました。

時には自分の常識にとらわれて、そこに当てはまらない沢山の文化や、価値観を受け入れ難いと感じたこともありました。しかし様々な文化や価値観を持つ仲間と過ごすことで、物事を捉える視点は日本にいた時よりも確実に広がりました。今まで気にしたことのなかったような小さなこと、例えば周りの人の主語の使い方や、話すときの単語の選び方、仕草などに目を向けるようになったと気付いた時には、日常に溢れた小さな出来事から沢山の学びを得ることができるようになったのだと実感しました。

私の留学は、中国語初心者が自分の興味と関心だけで飛び込んだものでしたが、本当に多くの学びを得ることができました。何かを学ぶために外国に行くのなら、現地の言語を習得していることに越したことはありません。私自身、ある程度の中国語を身につけていれば、日常で色々と大変な思いをすることはなかったと反省しています。しかし、それ以上に貴重な経験をすることができたので、台湾へ留学して本当に良かったと感じています。

FGS で留学に行かれた他の方々も書かれていると思いますが、留学は語学力の向上だけでなく、それ以上に自分と真正面から向き合って、その都度問いが生まれて考え込む、その繰り返しが成長につながるチャンスだと思います。
FGS には様々な分野で活躍されている先生方、そして自由に選択できるカリキュラムがあります。FGSを目指している皆さんには是非、様々な経験を通して自分の興味関心を見つけて欲しいです。そして、在学中に留学を考えている方は自分のやりたい!を大切に様々なことに挑戦していって欲しいです。

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