「あつさ」と「あたたかさ」を味わったテキサス留学
つめたいパンデミックの中で進めた留学準備
コロナ禍で閉塞的な日々を送る中、海外で挑戦してみたいと考えたのは、大学生生活が始まったばかりのことでした。留学に漠然とした興味を持って入学し、FGSで学術的な刺激を得れば得るほど、自分の目で海を超えた先の世界を見てみたいと考えるようになりました。「多様性の中で人々はどのように営みを形成し差別を乗り越え得るのか」という問いを追いかけ、最終的にサボテンの美しいテキサス大学にて、充実した1年間の交換留学を実現しました。
上智大学でアジア研究の領域を中心に学び、上級中国語やベトナム語を履修していたことから、当初はアジア圏での留学を視野に入れていました。しかし、パンデミックの影響で多くの国が学生ビザの発行を停止していたため、学内選考の出願時点で学生ビザを発行していたアメリカを留学先に選びました。2年次から留学可能であり、なおかつTOEFLのスコアを満たす協定校から、社会学で世界的な評価の高い大学をピックアップしました。アメリカ南部の名門校であるテキサス大学は、世界中から多様性と向学心をもつ優秀な学生が集うため、上記の問いを追いかけるにはぴったりな環境でした。 青空を楽しみながら予習、復習を進めました
「あつさ」がしびれるテキサス
メキシコと国境を接するテキサスは、「暑さ」が特徴的です。空港に降り立ったとき、温度計は気温111度を表示。華氏表記が手伝い、体感温度が一層上がる感覚を味わいました。
そして、テキサスは「熱さ」も兼ね備えています。大量のリーディング課題、ディスカッション中心の授業からは、教授と学生の熱意が伝わってきました。覚悟はしていたものの、やはり渡米当初は言語面で苦労することも多く、大量のリーディングを目の前に時間だけが過ぎていく状況に、もどかしさを覚えたこともありました。しかし、熱意あるところに、あたたかい支援は充実しています。オフィスアワーに通い、必要に応じてクラスメイトや寮の仲間からサポートをもらうことで、言語の壁は次第に薄くなっていきました。英語を話す夢をみるようになった頃には、授業で積極的に発言できるようになり、気がつけば白熱した議論に主体的に加わる自分がいました。
テキサスの「熱さ」は、授業以外でも感じることができました。例えば、キャンパスのアメフトスタジアムに詰めかけた10万人の観客の熱気、2022年秋のアメリカ中間選挙の緊張感、ボランティアとして参加した世界最大級のカンファレンス&フェスティバル「SXSW」でのにぎわいなど、どれも刺激的でした。特に、渡米前にFGS開講の「アメリカ研究」で中間選挙の動向を学んでいたため、要点を押さえて政治・社会的な緊張を現場で学ぶことができました。テキサス州はいわゆるレッドステイトですが、留学先の都市はリベラルな雰囲気が特徴的であり、現地生は固唾を飲んで州選挙結果の開示速報を見守っていました。銃社会特有の議論など、授業を踏まえてはじめて理解できたことも多々あり、FGSの学びが生かされたと感じる瞬間のひとつです。 カンファレンス&フェスティバルにて世界中から集まったゲストをおもてなし
4泊5日のアメリカ横断・縦断列車旅に挑戦するなど、アメリカ各地に足を運ぶ機会に恵まれましたが、他州と比べてもテキサスにはユニークな魅力が詰まっていると感じました。上記に述べた「あつさ」に加え、Southern Hospitalityに象徴される人々の「あたたかさ」も日々体感することができ、当初は想定していなかった留学先ではありましたが、かけがえのない経験を得ることができました。 感謝祭休暇を利用して訪れたアンテロ―プキャニオンにて
帰国後、留学経験を活かして
留学先ではダイバーシティに関する授業を多く履修しましたが、日米の文化や歴史の違いから授業内容の本質的な理解に際して混乱することもありました。そこで、解像度をぐっと引き上げた理解を試み、留学終了後も学びの発展を試みました。夏季休暇中には、アジア系アメリカ人のエンパワーメントを目的に活動する米国NPOにインターンとして飛び込み、アメリカ人と伴走しながら当事者の視座を学びました。秋学期には他学部履修制度を活用し、留学先で得た学びに関連する授業を中心的に履修しました。さらに、上智大学のダイバーシティウィークでのイベント企画・運営を通して、テキサスでの学びを四谷キャンパスにて体現することもできました。帰国後も留学先での学びを生かし続けることができたと思います。
テキサス留学での収穫物のひとつは、「あつさ」と「あたたかさ」という価値観であると考えています。この価値観を体得できたテキサス留学は、これからの人生を楽しむうえで貴重な糧となると確信しています。「多様性の中で人々はどのように営みを形成し差別を乗り越え得るのか」という問いに対する一定の答えも、テキサスで感じた熱いハートや人々のあたたかさに代表されるような、「あつさ」と「あたたかさ」に存在しているように感じています。
FGSで留学を目指す皆さんに伝えたいこと
留学に少しでも興味があれば、その自分を素直に受け止め、ぜひ一歩を踏み出してみてください。海外への扉は、想像よりもずっと近くに存在しています。キャンパスには頼れる相談先が用意されているだけでなく、留学準備を進めるためのリソースも豊富にあります。私は、FGSの英語開講授業を履修して言語面で準備運動を進めたほか、周囲のサポートに恵まれながら業務スーパーの奨学生に選出いただいたことで、安心して留学に挑戦することができました。こうして実現した交換留学は、間違えなく私の人生を変える、かけがえのない経験となりました。挑戦する人の背中を押してくれる環境に身を置いている今だからこそ、思いっきりチャレンジしてみることをおすすめします。そしてぜひ、その挑戦そのものを楽しんでみてください。応援しています!