文学研究科新聞学専攻
白承爀(ベック・スンヒョック)


−留学の経験や上智大学での研究の成果を生かし、学問的にも実務的
にも日韓両国を結ぶ架け橋に−


2006年学会にて発表


PROFILE
2001
年 韓国全州大学日語日文学科卒業。文学研究科新聞学専攻博士後期課程在学中。新聞学博士前期課程(修士)を経て、現在デジタル技術の導入による放送と通信の融合化をテーマに、主に新しいメディアの登場と政策との関係について研究している。


私は2001325日、韓国金浦国際空港から日本へ向けて飛び立ちました。日本語と韓国語が飛び交う機内の中で、これから馴染みのない日本での生活について期待と不安を抱きつつも、一人闘志を燃やしていた自分がいました。私にとってこの日は、どんな記念日よりも意味のある大事な日です。2006年、あの日成田空港に降り立って以来5回目となる正月を、日本で迎えました。

 韓国から、留学というと、米国やイギリスといった英語圏の国をイメージする人が多いと思います。特に韓国の言論学界の場合、日本への留学は、それほどポピュラーではないかもしれません。ところが、自分は、韓国言論学界の歴史や、東アジア地域において緊密度が高い日韓間の事情などを視野に入れ、日本留学を決心したのです。韓国への影響力や韓国では「ソフィア学派」とも呼ばれる歴史の古い上智大学新聞学科での研究を望み、今日に至っています。

 この5年間、自分なりにベストを尽くしてきたつもりですが、振り返ってみると、反省する点はいくつもあります。しかし、確かなことは、空港に降り立ったあの日の自分と今の自分とでは明らかに違うということです。さまざまな経験をし、いろいろな人々に出会う中で、一人として知り合いのいなかったこの日本に深い信頼関係をも築きました。そして何より、留学生だからといって甘えは許されるはずがありません。日本の大学院で専門的な学問の奥深い理論を理解するために、多くの日本人に接し彼らの考え方に触れ、勉強に立ち遅れないように努力したつもりです。とくに昨年一年間は、日本や韓国の学会で研究発表する機会を与えていただきました。もちろん目の回るような忙しさでしたが、学問のみならず心身ともに大変貴重な体験となりました。

 学問の奥深さや自分の知識の至らなさに苛立ち、落ち込み、結局、自分を捉えきれないまま一年が過ぎてしまった感もありますが、こうした機会を生かして、学問研究に対する自分のアイデンティティを掴むべきものだと考えます。そして、与えられたチャンスをうまく生かしものにしていくためにも、基本的な素養が必要だということがしみじみとわかりました。これらすべての経験は、どれもがお金では買えないきわめて貴重なものであると思います。私は昨年4月、博士後期課程に進学し、将来の夢に向かって研究者としての本格的な挑戦が始まったばかりです。ここでもう一度初心に帰り、あの日飛行機の中で感じていた闘志を思い出して、これから先の課題に能動的にぶつかって行きたいと思います。そして、留学の経験や上智大学での研究の成果を生かし、学問的にも実務的にも、将来日韓両国を結ぶ架け橋となるべく研鑽を積む毎日です。

新聞学専攻在籍院生の学会発表など
新聞学専攻から授与された学位論文