new2022年3月15日オリンピック・パラリンピック×上智インタビュー Vol.7

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東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、本学の学生もボランティアなどで多く関わりました。今回は、ボランティア活動に参加された5名に集まっていただき、活動の機会を通じて得た貴重な体験や感じた事についてお話を伺いました。


司会:ではまず、皆さんが東京2020オリンピック、パラリンピックでどんな役割をされたのか教えていただいてもよろしいですか。

堀江さん(堀江万友子 理工学専攻 博士前期1年): 私は東京2020オリンピック、パラリンピックの両大会で主に国立競技場で陸上競技をメインにテクニカルインフォメーションセンターと呼ばれる選手団のコーチや競技役員を繋ぐ情報伝達の仲介を担いました。ですので、直接選手と密に関わるという感じではなかったんですけど、各国のチームのスタッフとか競技を運営していく人たちと多く関わりを持って仕事をしていました。

清水さん(清水琴惠 総合グローバル学科2年):私も国立競技場で開会式、閉会式と陸上競技を担当していて、オリンピック放送機構(以下、「OBS」という)のカメラマン達のサポートを経験しました。実際にフィールド内で選手たちを生中継で取っているカメラマンのケーブルアシストをしたり、バッテリーを変えたり等のサポートをしました。なので、直接選手と関わるというよりは、メディア系の仕事が多かったです。

谷内さん(谷内美帆 社会福祉学科4年):私は大会フィールドキャストとしてパラリンピックに参加しました。会場の案内係や選手や記者団等の誘導をして、パラリンピックの開会式のリハーサルにも選手団や授与式のメダルを運ぶ役割として2回参加しました。

岡本さん(岡本佳澄 イスパニア語学科4年):私はオリンピックのボランティアとしてテニス競技に関わりました。有明テニスの森で活動し、主な仕事としてはアスリートエスコートです。試合ごとに選手の送り迎えをしたり、試合後に選手をインタビュー会場行きのカート乗り場まで案内したりしました。基本的には選手に直接アプローチして行う仕事が多かったです。

座談会の様子
座談会参加学生

司会:事前にご協力いただいたアンケートでは、ボランティアを希望された理由として、世界的なイベントに関わりたいと思うのと同時に、今後のキャリアに有益であることや自分のスキルを活かしたいという回答が多かったのですが、開催延期等様々な不安があった中で、皆さんのボランティアにかかわる想いの部分をお聞かせいただけますか。

清水さん:私は将来についてまだ定まっていませんが、メディア系の仕事はとても興味があるのでOBSでの経験は大変勉強になりました。基本的にはオールイングリッシュで有名なカメラマンさんと関わりをもって仕事をするという貴重な機会を通して、この経験をしなければ得られなかった学びが沢山ありました。

堀江さん:私は中学から現在までずっと陸上競技を続けていて、陸上競技の公式審判の資格も取りました。今後は自分が競技を引退しても審判員という立場で競技を支える側に興味があります。そんな中で世界的なイベントでの経験をしてみたいなっていう希望もありました。また陸上競技自体がすごく好きなので、そこで活躍する選手達に関われる機会があるのなら、ぜひやってみたいと思って応募しました。本来であれば学部4年生の時に開催される予定だったのですが、大学院に進学すると決めていたので、延期になっても絶対に参加しようと思っていました。

谷内さん:私がパラリンピックに参加した理由は、社会福祉学科に所属しながら、障害者や障害児についての研究を専攻しているということがひとつあります。オリンピックにも参加したかったのですが、開催と同時期に社会福祉実習があり、どうしても参加できないという状況がありました。そしてその後開催が延期されたり、色々不安要素がある中で少し迷いましたが、自分自身が間近で実際の様子を見て、経験を通して学んだり感じたりしたいと強く思ったのがパラリンピックだったので参加を決めました。

岡本さん:実は私はテニスをしたことがないんですけど、小学生の頃からテニスを観戦することは大好きでしたので、実際にそういうところで関わりたいと希望していました。なので、テニス競技のボランティアが決まったときはすごく嬉しかったです。延期等色々とありましたが、選手と直に触れ合える仕事であったため、心から開催を望んでいました。実際に開催されて得た経験は何物にも代えられないものになったと思っています。

司会:では、大会中のことについても教えていただけますか。

岡本さん:最初は、テニスを見るようになってから10年ぐらい間、テレビの中にいた選手たちが実際に自分の目の前にいることが不思議でしょうがなかったです。「今までの自分の人生ってこのためにあったのか」と思ってしまうぐらいすごく印象に残っていています。実際に自分が知らなかった選手も沢山いましたし、そういう方々のエスコートをして、テレビには映らない部分に触れることができたこともとても貴重でした。一番印象に残っているのがレジェンドと呼ばれる選手のエスコートが出来た経験です。ボランティアと選手との距離がとても近かったので、事務連絡等様々なところで接することができたのはとてもやりがいがありました。

有明コロシアム
有明コロシアム

司会:なるほど、ロンドンオリンピックの時にボランティアの方々のことをゲームズメーカーという呼び方をしていて、ボランティアの方々も一緒に試合を作る仲間の一人として位置づけられたことを思い出しました。皆さんがこの世界的な大会の中で役に立っていると実感した出来事等何かありましたか。

堀江さん:選手と関わりのある業務として、選手を待機場所に連れて行く仕事があったのですが、テレビの放映時間決まっているのになかなか現れない選手が結構いまして、チームのコーチ等に状況を伝えなければいけない時がありました。相手も英語のネイティブではなく、翻訳機を使ってもわからないときに、単語と身振り手振りでどうにか伝えてギリギリ5分前に間に合ったということもありました。その時に、見えないところで動いている人達がいるからこそテレビで見る側は滞りなく動いている姿を見ることができるのだなって実感しました。今までは競技しか見ていなかったのですけれども、考え方や見方を広げる経験になりました。

村上さん(村上真惟 新聞学科2年):私は大会フィールドキャストとしてオリンピック・パラリンピックの両大会でSIC という選手村の中にあるスポーツインフォメーションセンターで活動していました。練習場所の予約などチームごとのリクエストに対応していましたが、コロナ対策の制限で選手は直接来られないエリアになっていたので、コーチやその関係者の方々と接することが多かったです。対応する時には英語だけなく様々な言語が飛び交っていました。特にスペイン語圏の方は英語ができない方がとても多くいて、そういう時はスペイン語ができる方がに回す、というように一緒に働くボランティア同士の連携も必要でした。事務的な作業が多かったですが、本番を迎えるにあたって選手にとって練習はとても大切なことなので、重要な役割を担っていたなと後々改めて思いました。その時は忙しすぎて、そういう事を考える時間なんてなく、選手村の端っこの方にいたので凄く孤立している感じもあったのですが、ついさっき予約した選手がメダルを取っている姿をテレビで見たときなどは、重要なことに貢献できているなと思うことが出来ました。

清水さん:私は選手と同時にカメラマンさんの活躍をずっと見ていて、3週間のインターンシップ期間中は毎朝6時集合夜中12時に終わるというスケジュールで、カメラマンさんは3時間とか4時間しか寝てなくて、しかも炎天下の中だったので、体力も凄いし、テレビには映らないところでの仕事ぶりが想像以上に大変で圧倒されてばかりでした。OBS 専用のオフィス内には100名弱の関係者がいたのですが、色々な人と知り合いになって話す機会も結構ありました。基本的にフィンランド人カメラマンのサポートを担当していたので、英語が上手く伝わらなくて大変だったのですが、すごくワールドワイドな感じで面白かったです。

谷内さん:大会中だとメダルを運ぶ係を経験したことが一番印象に残っています。間近でメダルを見る事ってまずないので、それを自分が運ぶなんて緊張しかなくて、落としちゃいけない、ずらしちゃいけないって思いながらかなり神経を使いました。テレビで見ているだけではわからないメダルの重さや、細かいところに綺麗な模様が書いてあるのがわかったりしたことがすごく印象に残っています。あと、リハーサルで本物の日本の旗を持つ機会もあって、床につけちゃいけない、汚しちゃいけないって、それもまた緊張でしたが、今思うとすごく貴重な経験をしていたんだなと思います。

OBSカメラマン
OBS活動

司会:それはこれまでに無い緊張感ですね。パラリンピックの話でいうと、共生社会の視点で語られることが多いですが、そういうところで何か強く感じられたことや特別感じたことなどありますか。

村上さん:直接選手と話す機会は特になかったのですが、皆さん明るくて一見全然障害があるように見えない方が多くいらっしゃいました。パラリンピックは障害のレベルによって複数のクラス分けがされていたり、細かいルールもあって難しかったのですが、そんなことよりも選手たちが皆生き生きしている姿のほうが印象強く、これまでの価値観がすごく変わりました。

司会:なるほど。実際にボランティアとして参加して様々な国の方々を見ることが出来た経験があってこそですね。多様性というところにおいて、言葉やコミュニケーション等様々な人々と一緒に仕事をしたり、サポートしたりするなかで印象に残ることや自分にとって良い経験になって将来に生かせそうだなと思える経験はありましたか。

清水さん: OBS は本部がスペインにあるので、マネージャーの方々はスペイン語で、カメラマンさん達はフィンランド人で、インターン学生の私は日本人でと英語がネイティブの人が誰もいない状況だったので、ミスコミュニケーションがかなり多かったです。カメラの配置がおかしくなってしまったときに日本語と拙い英語でどうやってネイティブじゃない人に伝えるかということを考えて行動したことはすごく勉強になりました。

各国のボランティアメンバー
各国のボランティアスタッフ

司会:それはアルバイトや大学の授業でのインプットだけでは得られない経験かもしれないですね。そういうところに課外活動とかボランティアの意味合いがあるのかもしれないですね。

村上さん:それで言うと、私もカメラマンさんたちの誘導の際に、色々な国の言葉が飛び交っていて何言っているのか全然わからなくて、最初の質問は英語で言ってくれるのですが、その答えを英語の単語で伝えても、相手もネイティブでないのでそれだけだと全く伝わらず、どうしたら良いのだろうと一緒にボランティアしていた人達と話し合いました。その中で案内図を見せたり、標識を伝えたり、見てわかるものを示したりと言語以外でのコミュニケーションの方法を持つことも大事だなと感じました。

岡本さん:私はイスパニア語学科なので、スペイン語が必要な時は積極的に選手や関係者の方々に話しかけたりしました。テニスはシングルスとダブルスがあって、シングルスは個人なので大丈夫だったのですが、ダブルスはふたりで集合場所に選手が来るということになっていたのですが、なかなか来ないことがありました。試合前の選手は精神的に張りつめていて、対戦相手が集合場所にいることが分かると近づいてこないので、その場で待っているだけでは駄目で、精神的な状況にも配慮して行動しなければいけないことが難しかったです。ですが、そんな経験なかなかできないのですごく勉強になりました。そして張りつめた緊張感のなかでもトップの選手達はボランティアの私たちに対してもしっかり応対してくださっていて、偉大さをすごく感じました。

堀江さん:チームスタッフ達の熱意が凄かったので、その対応に苦慮したことがありました。選手が転んでしまったり、時間に遅れて競技に出れなくなる等のトラブルがあったときに選手本人以上にスタッフの方々から抗議を受け、すごく強く言われるので怖くなってしまいました。でも、おどおどしていると逆に不信感を持たれてしまうので、自分の言うべきことはちゃんと言わなければという思いをもって対応することを心掛けていました。

ボランティア参加者
パラリンピックボランティア

司会:最後に、この経験の前と後で変わったことやこの経験を今後どう活かしていきたいかを是非お聞かせいただけますか。

村上さん:私は選手村のSICという案内所にいたので、ジャンル問わず多くの質問やリクエストに対応していくなかで、普段日本で過ごしているだけでは出会うことが出来ないような方々とコミュニケーションが取れたということが貴重だったと思います。また、その経験が出来たことが「自分にもできる」という自信に繋がったと思っています。東京でオリンピックが開催されると決まった時から絶対にボランティアをやるって決めていたので、開催がどうなるかわからなくなり不安になったこともありました。実際に始まって、同じ熱意をもったフィールドキャストの方々と協力して大会を無事終えられたのはとても良かったと今は思います。所属している新聞学科の取り組みでオリンピック開催に関するドキュメンタリーを作ったのですが、そこでモヤモヤしている気持ちとかボランティアに参加したからこそ得られる思いを表現して映像祭に出したところ、賞を頂くことが出来たので、それもこの経験無しではなかったことだなと思っています。

清水さん:私は総合グローバル学部で色々な国の文化、特にアイデンティティということについて研究しています。今回のこの経験を通して、自分の日本人としてのアイデンティティみたいなものもすごく意識しましたし、色んな国の人々と接することでそれぞれの文化に直接触れることができて、それは本当に今後の研究とか今後のキャリアに活かせるかなってすごく思いました。

座談会参加者
座談会参加学生

堀江さん:私が感じたことは二つありました。一つは私自身がずっと陸上選手として活動しているので選手目線の部分が強かったのですが、オリンピック・パラリンピックのボランティア経験を通して、選手をサポートするコーチや監督など、選手を支えるスタッフの力の偉大さを実感したということです。二つ目は特にパラリンピックで感じたことですけど、「自分の中でマイノリティだと思っていたことってなんなんだろう」ということを改めて考えさせられる機会になりました。大多数の人が思っていることが正当化されてしまい、差別が生まれてしまうのですが、開催期間中はみんな違って、それぞれの個性が尊重される環境がありました。この経験で得られた価値観を大切に今後も活かしていきたいと思います。

岡本さん:改めてテニスっていう競技と選手の凄さに気づかされました。技術的に優れていてもメンタル面の強さも備わっていないと勝てない競技だなと様々な選手との関わりをもって実感しました。また、私たちボランティアが朝会場に行った時には既に練習を始め、夕方シフトを終わって帰ろうとした時にもまだ練習していたりと長時間トレーニングをしている姿を見てプロ意識とかその凄さっていうのを実感させられ、更にテニスが好きになりました。

谷内さん:私は来年社会人になるのですが、社会福祉関係の職に就くので、パラリンピックボランティア経験で学んだ価値観を活かしていきたいと思っています。私たちが勝手に障害者だからと差別していただけで、健常者だって視力が低かったり、不得意なことがあったり、色々あるので、そういうことを健常者、障害者問わずそれぞれの個性としてみる大切さを改めて気づかされましたし、今後の仕事に活かしていきたいなと思っています。

司会:ありがとうございます。同じボランティアという立場でもそれぞれ様々なエピソードをお持ちで、参加したからこそ得た経験や価値観を活かして、今後目指す進路に向かってくださいね。事情があってボランティア参加が叶わなかった人も多いと思いますので、その経験をぜひ周囲にも共有していってください。

貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍が楽しみです!