
■はじめに
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は1年延期になりました。開催延期決定から1年以上が経過し、開会予定日の2021年7月23日まであと2カ月余りと迫っていますが、まだコロナウイルス感染症は収束に至っていない状況です。
そのような中でも、本学のソフィア オリンピック・パラリンピックプロジェクト(SOPP)の学生プロジェクトである「Go Beyond」は、積極的に活動を続けてきました。
学生プロジェクトの活動に敬意を表しながら、50年以上を遡り1964年東京オリンピック(第18回オリンピック競技大会)における本学の関わりを、主に「通訳ボランティア」に焦点を当てて紹介します。
■通訳ボランティアについて
1964年の東京オリンピックでは、通訳が950人活躍し、この中には約300人の学生が含まれていたとのことです。(資料①『小林哲夫の学校を見る眼 第13回 オリンピックと大学』(PDF))
本学における学生の通訳ボランティアの募集~採用~講習に関して、残されている記録に基づき、時系列で整理してみます。
1962年 | ||
12月 | オリンピック東京大会組織委員会が大会通訳に関する方針と全体計画を立案 | |
1963年 | ||
4月 | オリンピック東京大会組織委員会が通訳の採用と訓練を開始 東京都下の「特に語学教育に熱心であるとみられた約20の大学」に対して、英語またはフランス語に堪能な学生15~20人の選定を依頼 ⇒ 18の大学から298人の推薦を得る。 | |
7月~ 8月 | 学生通訳講習会が上智大学で開催される。 | |
7月 8日 | オリンピックに関する一般知識、大会通訳としての心構えなどに対する訓練を実施。『朝日新聞』で取り上げられる。 | 資料②(PDF) |
9月 1日 | 「語学より誠意 300人が夏休み講習」という見出しで、『讀賣新聞』で取り上げられる。 | 資料③(PDF) |
1964年 | ||
6月18日 7月 7日 | オリンピック東京大会組織委員会から上智大学長あてに「オリンピック東京大会時のフランス語通訳推薦方について(依頼)」 上智大学長からオリンピック東京大会組織委員長あてに「オリンピック東京大会時の通訳推薦について(回答)」 | 資料④(PDF) |
9月20日 | 「みんなが代表選手 史上最大1200人の通訳団」という見出しで、『讀賣新聞』に掲載。上智大生のコメントもあり。 | 資料⑤(PDF) |
■通訳ボランティアとして活躍した庄司和子さん
ここでは、1964年の東京オリンピックで実際に通訳ボランティアとして活躍した、外国語学部フランス語学科卒業生の庄司和子さんを紹介します。
庄司さんは、フランス語の通訳としてフェンシング競技を担当しました。
庄司さんは、2020年12月に開催されたオンライン講演会「上智大学と1964年東京オリンピック」に登壇。当時の貴重な写真とともに、本学のLL教室を視察されたベルギー国王ボードワン1世とフランス語で会話したエピソードなどを紹介しました。 ⇒ オンライン講演会「上智大学と1964年東京オリンピック」はこちら
■その他の1964年東京オリンピックにおける本学の関わり
通訳ボランティア以外に本学の関わりを示す資料を紹介します。これらは、上智学院ソフィア・アーカイブズに所蔵されているものです。
文書を見ると、その依頼内容は多岐に亘っており、1964年東京オリンピックの開催のためにさまざまな人たちが関わっていることが垣間見えます。
1963年 | ||
9月26日 | オリンピック東京大会選手村給食業務委員会から上智大学長あてにサービス要員の人選依頼 ⇒大学の観光事業研究会およびホテル研究会の学生に協力いただきたいとのこと | 資料⑥ 1ページ目(PDF) |
10月4日 | オリンピック東京大会組織委員会から上智大学長あてに「オリンピック東京大会における選手団への給食業務に対する協力方(依頼)」 ⇒選手村における選手団への給食業務を社団法人日本ホテル協会へ委託。日本ホテル協会が、給食業務の「サービス要員」を募集。これに関する配慮の依頼 | 資料⑥ 2ページ目(PDF) |
1964年 | ||
1月 | ドイツ放送会社との会議室使用契約 ⇒ドイツ放送会社が、取材のために上智学院に上智会館会議室の使用許可を申請。その後、ドイツ語でのやり取りが続けられ、1964年9月に契約。9月29日~11月2日の期間使用 | *ドイツ語に よるやりとりなど多数 |
5月20日 | オリンピック東京大会組織委員会から上智大学長あてに「オリンピック東京大会役員強化全国大学クラブ対抗戦蹴球大会への役員派遣(依頼)」 ⇒日本蹴球協会(日本サッカー協会)が、理工学部勤務の野村正二郎氏をオリンピック蹴球役員として推薦。その派遣に便宜を図るように依頼したもの | 資料⑦(PDF) |
■さいごに
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は、まだ不透明な状況です。
ただ、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、多くの学生が自分にできることを考え、大会をきっかけとして共生社会の実現を目指して活動してきたことには意味があります。
改めて、ソフィア オリンピック・パラリンピックプロジェクト(SOPP)の学生プロジェクトである「Go Beyond」の活動が、10年後、20年後、そして50年後の将来、その時代の学生や教職員にどのように伝わるのか、楽しみに思います。
■資料
資料① 進学レーダープラス Vol.8 2013 から 『小林哲夫の学校を見る眼 第13回 オリンピックと大学』
資料② 朝日新聞(夕刊)1963年(昭和38年)7月8日
資料③ 讀賣新聞(夕刊)1963年(昭和38年)9月1日
資料④ 上智学院ソフィア・アーカイブズ所蔵
資料⑤ 讀賣新聞(夕刊)1964年(昭和39年)9月20日
資料⑥ 上智学院ソフィア・アーカイブズ所蔵
資料⑦ 上智学院ソフィア・アーカイブズ所蔵