樋渡 展洋 (ひわたり のぶひろ)

東京大学名誉教授

学位
PhD (Political Science) 1989/12
法学博士 東京大学 1990/2
経歴
1993年4月 – 1998年3月 東京大学社会科学研究所助教授
1994年12月 – 1996年5月 ハーバード大学国際問題研究所客員研究員およびケンブリッジ大学セント・ジョ ンズ・カレッジ海外フェロー
1996年8月 – 1997年6月 カリフォルニア大学 バークレー 校政治学部客員教授
1998年4月 – 東京大学社会科学研究所教授
1999年9月 – 2000年6月 コロンビア大学政治学部客員教授
2005年8月 – 2006年8月 ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所客員研究員
2009年8月 – 2010年8月 イェール大学マミランセンター客員研究員(東大・イェール・イニシアチブ派遣)
2015年8月 – 2016年8月 イェール大学マクミランセンター客員研究員・政治学部客員教授
2021年4月- 東京大学名誉教授
研究分野
政治経済・国際政治経済
研究キーワード
政治体制(民主制・権威主義体制)、市場制度、国際経済関係、国際金融、構造改革、国際制度
研究テーマ
1先進諸国の経済危機と代表民主政の政策対応

Persuade, Position, or Pander? Competence Claiming and the Democratic Governance of Developed Open-Economies

先進諸国での国際不況に直面して,政党指導者たちが往往にして選挙で不人気な「新自由主義的」政策を敢えて主張し,政権獲得後、公約を実現するために努力する理由を,指導者が選挙に有権者の信託を受けるためには政策有能性を訴える結果でからであるという議論を,計量分析と事例分析で明らかにした.成果本の第一稿は2009度完成した.現在、大幅な改定を終えようとしている.

2 資本移動・民主化の拡大と地域政治経済連携の形成

Ties that Bind and Divide: Liberal Democracies, Economic Agreements, and the Rise of Regional Rivalries

2000年代以降,停滞しているWTOドーハーラウンドでの争点を網羅するような(TPPに代表されるような)「21世紀型貿易協定」 (extensive trade agreements が先進民主国主導で拡大し,地域経済連携の核になっている.なぜ,どのように,先進諸国がこのような包括的貿易協定の拡大を先導し,なぜ保守的権威主義体制(一党支配)はこのような協定に反発してWTOの枠内での貿易協定 (basic trade agreements)の拡大 を選好し,なぜETAsへの参加を躊躇している新興民主国や競争的権威国への両陣営の対抗的連携の結果,性格の異なる地域経済連携の並立を形成するかを説明する.そのことで,異なる政治体制の対外的経済関係の拡大の戦略が地域経携の形成要因になっているという新しい理論を実証する.実証は,全世界の国々の 1978-2016 年までのデータの計量分析とラテンアメリカ,旧東欧・ソ連圏とアジア太平洋とを素材とした事例分析で行っている.(「アジア太平洋地域のおける国際協力未発達の国内政治要因」(科研・基盤研究(C))を受け、現在、草稿の完成を目指している.

3 経済停滞下の日本の政党政治の変容

Dominant Party Resurgent? Structural Reforms, Policy Competence and the Rise of Party Government in Japan

90年代以降,政治制度改革と経済停滞の下で,日本の政党制がどの程度,利益誘導の顧客政党制から経済政策をめぐる政策政党制に変容し,その際の主導権をなぜ旧体制の自民党が維持したのかを検証する.同様の政党制変容に関して研究が最も蓄積している中南米諸国,旧東欧諸国の研究に依拠して,検証は(1)構造改革によりどの程度,地元利益誘導の資源が減少したか,(2)候補者マニフェストが地元利益重視から所属政党重視にどの程度変化したか,(3)サーベイ調査によりどの程度,有権者の選好が地元利益より経済回復を重視ているのか,(4)そして自民党の選挙基盤が農村から都市へと移動したのかを通して行う. 本研究は「日本の一党優位支配の動揺・変容・復調の政治経済分析」(科研・基盤研究(C))の助成を受けた.

編著書
『戦後日本の市場と政治』東京大学出版会, 1991年
“Olivier Zunz, Leonard Schoppa, and Nobuhiro Hiwatari (eds.), Social Contracts Under Stress: The Middle Classes of America, Europe, and Japan at the Turn of the Century, Russell Sage Foundation: New York: 2002.
樋渡展洋・三浦まり(編)『流動期の日本政治:「失われた十年」の政治学的検証』東京大学出版会: 199-218頁, 2002年.
東京大学社会科学研究所編『「失われた10年」を超えて II 小泉改革の時代』東京大学出版会: 2006年.
樋渡展洋・斉藤淳編『政党政治の混迷と政権交代』東京大学出版会: 2011年.
主な論文
“Adjustment to Stagflation and Neoliberal Reform in Japan, the UK, and the US”, Comparative Political Studies, 31(5): pp.602-632, 1998.
“Embedded Policy Preferences and the Formation of International Arrangements after the Asian Financial Crisis”, The Pacific Review, 16(3): pp.331-359, 2003.
「経済政策の国際・国内連携と銀行部門危機処理の政策経路」『レヴァイアサン』34: 53-90頁, 木鐸社, 2004
「国際経済交渉と政策選好:アジア金融危機を事例に」藤原帰一・李鐘元・古城佳子・石田淳(編)『国際政治講座3 経済のグローバル化と国際政治』東京大学出版会: 87-144頁, 2004.
「国際的不況とディスインフレ的経済規律:経済政策における選択肢と90年代長期経済停滞の日本・スイス比較」『レヴァイアサン』36: 105-145頁, 2005.
「小泉改革の条件:政策連合の弛緩と政策過程の変容」『レヴァイアサン』39: 100-144, 2006年.
「国際資本移動増大の帰結と政治体制の対応形態—世界不況後の国際協調の特性」『レヴァイアサン』50:pp.62-89, 2012
「国際的不均衡の国内的起源と金融危機後の国際協力の可能性」中逵啓示・浦田秀次郎編『なぜリージョナリズムなのか』(ナカニシヤ出版, 2013)
所属学協会
America Political Science Association, Midwest Political Science Association, Southern Political Science Association, International Studies Association
日本政治学会、日本国際政治学会、選挙学会