去る3月8日(日)の講演会「「描かれた幻視」から探るヒルデガルト」は、
おかげさまで60余名の聴講者においでいただき、盛況のうちに終わりました。
鈴木桂子先生のご講演では、プロジェクターで図説しつつ、幻視著作の挿絵の作成意図と影響、これへのヒルデガルトの関与、挿絵と当時の造形芸術との異同を詳細に説明されました。矢内義顕先生のコメントは、ヒルデガルトの多岐にわたる活動がまさにベネディクトの『戒律』に基づき、さらに彼女が稀有な『戒律』の注解者であったことを指摘しつつ、ヒルデガルトは幻視を「書き記せ」と同時に「語れ」と神から命令を受けていることをテキストから指摘され、彼女の修道院内で彼女が自らの幻視について語り、幻視の内容が修道女たちに共有されていた可能性を強調されました。
質疑応答では、まさに挿絵に込められた幻視著作のメッセージとはそもそも何であるかについて熱心な議論が交わされました。
また「講演会」ならではのこととして、登壇者から聴講者への逆質問もあり、「ヒルデガルトは神秘家であるのか」が問われ、「神秘主義」を狭義で捉えた上では、彼女はのちに続く「神秘家」とは一線を画するとの意見があり、ヒルデガルトの思想史上の特殊性を会場で改めて認識することとなりました。
登壇者、聴講者の皆様、また予算的に本講演会を支えてくださった上智大学研究機構に改めて御礼を申し上げます。
所長 佐藤直子
* 聖ヒルデガルト修道院とLand der Hildegard(観光案内)のパンフレットの残部がございます。関心がおありの方には、研究所にてお渡しします。