民間放送の報道活動は、民主主義社会の健全な発展のため、公共性、公益性の観点に立って事実と真実を伝えることを目指す。
民間放送の報道活動に携わる者は、この目的のために、市民の知る権利に応える社会的役割を自覚し、常に積極的な取材・報道を行うとともに、厳しい批判精神と市民としての良識をもち、ジャーナリストとしての原点に立って自らを律する。この活動は、市民の信頼を基盤として初めて成立する。
 社会のあらゆる分野で、透明的・公開性が求められている今日、報道に携わる者の社会的使命と責任は極めて重くなっている。
われわれは「日本民間放送連盟 報道指針」を、日常の取材・報道活動の道標として、不断の努力を行う。

1.報道の自由
 報道活動は、市民の知る権利に応えることによって、平和で豊かな民主主義社会を実現することを使命とする。
 取材・報道の自由は、その使命のために、市民からわれわれに委ねられたものである。
 この自由は、あらゆる権力、あらゆる圧力から独立した自主的・自立的なものでなければならない。

 (1)取材・報道の判断は、市民の知る権利に応えることを第一の基準とし、報道活動は、真実を伝える良心のみに依拠する。
 (2)報道活動は、公共性、公益性に基づいて、あらゆる権力の行使を監視し、社会悪を徹底的に追及する。
 (3)報道活動は、あらゆる圧力、干渉を排除する。

2.報道姿勢
 誠実で公正な報道活動こそが、市民の知る権利に応える道である。
 われわれは取材・報道における正確さ、公正さを追及する。

 (1)視聴者・聴取者および取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ。取材・報道にあたって人を欺く手法や不公正な手法は用いない。
 (2)予断を排し、事実をありのまま伝える。未確認の情報は未確認であることを明示する。
 (3)公平な報道は、報道活動に従事する放送人が常に公平を意識し、努力することによってしか達成できない。取材・報道対象の選択から伝え方まで、できるだけ多様な意見を考慮し、多角的な報道を心掛ける。
 (4)情報の発信源は明示することが基本である。ただし、情報の提供者を保護するなどの目的で情報源を秘匿しなければならない場合、これを貫くことは放送人の基本的倫理である。


3.人権の尊重
 取材・報道の自由は、あらゆる人々の基本的人権の実現に寄与すべきものであって、
 不当に基本的人権を侵すようなことがあってはならない。市民の知る権利に応えるわれわれの報道活動は、
 取材・報道される側の基本的人権を最大限に尊重する。

 (1)名誉、プライバシー、肖像権を尊重する。
 (2)人種・性別・職業・境遇・信条などによるあらゆる差別を排除し、人間ひとりひとりの人格を重んじる。
 (3)犯罪報道にあたっては、無罪推定の原則を尊重し、被疑者側の主張にも耳を傾ける。取材される側に一方的な社会的制裁を加える報道は避ける。
 (4)取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に対し、節度をもった姿勢で接する。
 (5)報道活動が、報道被害を生み出すことがあってはならないが、万が一、報道により人権侵害があったことが確認された場合には、すみやかに被害救済の手段を講じる。


4.報道表現
 報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない。
 過度の演出、センセーショナリズムは、報道活動の公正さに疑問を抱かせ、市民の信頼を損なう。

 (1)過度の演出や視聴者・聴取者に誤解を与える表現手法、合理的目的のない匿名インタビュー、モザイクの濫用は避ける。
 (2)不公正な編集手法、サブリミナル手法やこれに類する手法は用いない。
 (3)資料映像・音声を使用する場合、現実の映像・音声と誤解されることのないようにする。視聴者・聴取者に理解されにくい手法を用いた際は、その旨を原則として明示する。

5.透明性・公開性
 報道活動は、市民に理解されるものでなければならない。
 このため民間放送は報道機関として市民に対して透明性をもち、
 可能な限りの情報公開を自ら行っていく姿勢が必要である。

 (1)視聴者・聴取者の意見、苦情には真摯に耳を傾け、誠意をもって対応する。報道活動に対する批判には、報道機関として可能な限りの説明責任を果たす。
 (2)誤解や訂正すべき情報は、すみやかに取り消しまたは訂正する。
 (3)報道活動によって得られた放送素材は原則として放送目的以外には使用しない。しかし、視聴者・聴取者の正当な視聴要請などには、誠意をもって対応することが必要である。