院生たちの声
大学院の魅力
少人数の対話形式の授業を通して、ひとりひとりの先生方と密に交流できることが、大学院の最大の魅力だと思います。先生方が専門とする分野や、その時々に関心のあるテクストが対象となるため、どの授業も必然的に内容の濃いものになります。また扱うテクストには未翻訳のものもあり、テクストは基本的にフランス語で読んでいきます。前期課程の2年間でフランス語の読解力がかなり高まりました。
存分に勉学・研究に集中できる環境も整っています。図書館には各専攻に専用の大学院研究室(院生室)があって、専門的な研究資料やPCなどが備えられ、大学院生は朝8時から夜10時までこの院生室を利用することができます。
アウトプットの機会も多く、各院生の修士論文・博士論文の構想や進捗状況を発表する場が定期的に設けられています。特徴的なのは、そうした発表会が専攻の院生と教員の全員参加のもとで行われるということです。そのため、教員・院生の間で自由に意見を交換することができます。
また上智大学ではシンポジウムや研究会、海外から研究者を招いた講演会が頻繁に行われているため、研究の最先端に触れることのできる格好の環境であると思います。
院生の研究生活(博士前期課程の場合)
進学の動機
卒業論文で研究対象にしたミラン・クンデラの小説作品について、更に理解を深める時間と機会を得たかったからです。また学部生の頃から、院生が主宰する読書会に参加したり、先取り履修制度で院の授業を受講したりして、大学院のアットホームな雰囲気や、じっくりとテクストに取り組むことのできる環境に惹かれていたことも理由のひとつです。
研究テーマ
研究対象はミラン・クンデラの小説作品です。きっかけは、学部3年生の頃にクンデラの『無知』という作品を扱う授業を受講したことでした。他の作品を読み進めるなかで、「人間とはどのような存在なのか」という根本的な問いを、独創的かつユーモアと思慮に満ちた「物語」において展開するとともに、人間存在のあるがままの真実を、ある種の残酷さを受け入れつつ、真摯に探り出そうとする彼の小説家としての態度に惹かれていきました。卒業論文ではクンデラの作品に現れる「身体」、修士論文では「顔」というモチーフに着目して、論文を執筆しています。どちらも「自我」にまつわる問い、そしてクンデラの『不滅』という作品の分析が中核にありますが、先行研究やクンデラに関する様々なテクストを参照するなかで、「顔」にまつわるクンデラの意図的な言及に次第に目が留まるようになり、「身体」から「顔」へと対象を限定していきました。
大学院の生活
受講する授業の数はそれほど多くありませんが、ひとつひとつの授業がとても密度の濃いものです。授業のある日は一日大学にいて、課題や修士論文の準備をしていました。修士論文は2年次の5月より資料の収集や論文構成の構想を始め、9月より本格的に執筆を開始し、1月に提出しました。12月から1月にかけては同級生と院生室で終日、互いに励ましながら閉館直前まで論文執筆に取り組んだことは、今となってはいい思い出です。指導教員とは、断続的ではありますが隔週で面談をし、研究者としての視点から、引用の仕方や語の訳し方などについても詳細な指摘やアドバイスをいただいていました。 授業のない日には、インターンとしてメディア系の会社で働いていました。また授業の補助をするTA(ティーチング・アシスタント)として、学内で働くこともできました。
私の時間割
前期課程1年 春学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1 | |||||
2 | モデルニテ研究I | キリスト教文学研究I | |||
3 | 専門文献研究AI | TA | |||
4 | 古典主義文学研究I | 専門文献研究DII | |||
5 |
前期課程1年 秋学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | |||||
2 | モデルニテ研究Ⅱ | ||||
3 | キリスト教文学研究II | ||||
4 | 専門文献研究BI | 専門文献研究CII | |||
5 | TA |
前期課程2年 春学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | |||||
2 | 専門文献研究DI | TA | |||
3 | モデルニテ研究I | ||||
4 | 19世紀小説研究Ⅰ | ||||
5 |
前期課程2年 秋学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | |||||
2 | 20世紀文学研究I | キリスト教文学研究II | |||
3 | TA | ||||
4 | 専門文献研究AII | ||||
5 |
院生の研究生活(博士後期課程の場合)
進学の動機
私がフランス文学に出会ったのは、学部生のときです。ひとつひとつの作品に保存された当時の風俗や歴史、思想を紐解くこと、言語による表現の可能性を人間がいかに追求してきたかを知ること。それが本当におもしろく、修士まで研究を続けました。その後一度就職をしましたが、働きながら、自分が人生の軸に据えたいのはフランス文学の研究であると気づき、博士後期課程の受験を決めました。
研究テーマ
卒業論文・修士論文から継続して、19世紀から20世紀にかけて生きたマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の作品研究をしています。学部生のときに授業でこの作品に出会い、記憶という主題以外にも、独自の想像力とさまざまな感覚を繊細に取り込んだ描写にすぐに惹かれ、長さも忘れて夢中になって読みました。卒業論文では、時間上・空間上の座標が不意に失われる感覚を「めまい」と名付け、その出所を多角的に分析しました。現在では、この作品の語りと物語内容に頻繁にあらわれる「反復」構造が、実際にはどのように中断され、揺らいでいるかに注目して、その意義と効果を分析しています。
大学院での生活
大学図書館や院生室を利用しながら、テクストの分析と資料の読解を進める日々です。
フランス文学専攻では定期的に博士後期課程の院生の研究発表会があり、発表の際には、担当教授の指導を受けながら、研究内容をまとめます。また教員と院生・修了生で組織する学内学会(上智大学フランス語フランス文学会)もあって、1年次の秋にはそこでの発表も行い、訪れた研究者や学生の方々から様々な意見や教えを得ることができました。
自分の研究を進めるかたわら、専門以外のテーマや作品についても、主に授業への参加を通じて、幅広く学んでいます。上智大学には、各世紀の専門の先生が揃っていて、豊富な授業が用意されています。テクストの講読や発表、先生や学生との議論などを通して視野を広げ、研究への気づきも得られる、大切な時間です。
また現在は、2年次の秋からのフランス留学を目指して、その準備もしています。現地の大学の先生とのやりとりや、研究計画書の執筆、奨学金の申請など、することは多くありますが、指導教員とフランス人の副指導教員をはじめ、周りの先生方や先輩たちに助言をいただきながら、ひとつひとつ進めています。
私の時間割
後期課程1年 春学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1 | |||||
2 | アンシャン・レジーム文学特殊研究Ⅱ | ブルトン勉強会(隔週) | |||
3 | モデルニテ 特殊研究Ⅰ | ||||
4 | 19世紀小説特殊研究I | 専門文献研究BⅡ | |||
5 |
後後期課程1年 秋学期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | |||||
2 | 20世紀文学特殊 研究I | ||||
3 | |||||
4 | 専門文献研究BI | 芸術文化研究IB(他専攻科目) | 専門文献研究AII | ||
5 | TA |