哈爾濱(ハルビン)学院に関する新刊本

上智大学 名誉教授
宇多 文雄

ロシア語学科の名誉教授・宇多文雄先生から本の紹介文をいただきましたので、教員ブログとして掲載します。(上智大学ロシア語学科と哈爾濱学院との関係についてはこちらもご覧ください。)

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ハルビン学院に関する新しい本のご紹介です。ロシア語学科とその卒業生はハルビン学院顕彰基金などの関係で、半ば学院の後継者のような立場にいますが、学院の歴史および上智大学ロシア語学科との関係を簡潔に(100ページ程度)紹介する本が出ましたので、推薦します。

 

全112ページ、税別¥900です。

飯島一孝著『ハルビン学院の人びと-百年目の回顧』群像社(ユーラシア文庫16)。かつてのユーラシア・ブックレット程度のヴォリュームです。群像社ネットショップやアマゾンでも購入可能です。著者は東京外国語大学ロシア語科卒、元毎日新聞記者で、モスクワ特派員も6年務めた人です。直接学院とは関係がありませんが、毎年高尾霊園で開催される記念碑祭にも出席されている、学院に関心をもつ人のひとりです。最近出版されて私も寄贈され(若干情報提供協力もしました)、ハルビン学院のことを知るための格好の本だと思いました。もちろん基本的資料としては恵雅堂出版の『哈爾浜学院史』がありますが、大部の本だし、一般向けではありません。また芳地隆之氏の新潮選書『ハルビン学院と満州国』も力作ですし、様々な関係者の回想録もあります(そのほとんどが個人的なものなので、学院の全体像を提供するものではありません)。ただ、今回の本は学院と関係者のことに絞って(あまり分析や評論をせずに)、その全体像が手ごろな長さにまとめられており、それでも創立期の社会情勢や後藤新平の人柄に始まって、上智の『ハルビン学院顕彰基金』に至るまで、もれなく書き込まれていて、よい意味で「手軽な」、しかし不可欠の入門的参考書になりました。

私も含めて、学院同窓生と年齢差のある人間にとっては、学院の存在は今ひとつわかりにくいものでした。本書の著者自身もそういう世代の人です。だからかえって情緒的な思い入れはなく、客観的に描かれています。上智ロシア語学科の関係者、特に教員や奨学金をもらった人は、この程度のことは知っておいた方がいい、と思うものです。