賑やかな森での暮らし

小西紗代

Hallo! ザールラント大学に留学中のドイツ語学科2年小西紗代です。ドイツに来て2か月と少し、今日は口座を持っている銀行がストライキで営業しておらずしみじみとドイツを感じました。在外履修のおよそ3分の1が終わった今、ここまでの私の体験をご紹介したいと思います。

ザールブリュッケンでの暮らし
私が暮らすのはザールラント州の州都であるザールブリュッケンという街です。市内の移動はバスや路面電車が主で、自転車やさらにはレンタルの電動キックボードも多く見かけます。

街の中央駅周辺は大型デパートやレストランが立ち並びとても賑やかですが、ザールラント大学や私の暮らす寮は自然豊かな森の中にあり、寮の名前はそのままずばり“Waldhaus”=「森の家」です。最寄りバス停の横にある草むらではヒツジが飼育されており、寮では虫に気を付けて、という注意が出されるような場所です。頻繁にあるバスに乗ればにぎやかな街に出ることができ、家では豊かな自然に囲まれて暮らすこの生活を私はとても気に入っています。寮周辺が静かすぎる、という話も先輩の体験から聞いていたのですが、寮自体は時々パーティーがあったり、3時まで歌を歌っている人がいたりと賑やかすぎるくらいです。

私にとってはここでの暮らしが初めてのひとり暮らしで、見慣れない食材や調味料ばかりの環境での自炊が最大の難関です!塩一つ買うのにもあれこれ悩む一方で、東京で買おうと思えば1本数百円はするヴルスト(ドイツ語でソーセージ)が6本300円で手に入ることに感動したりしています。

大学生活
新型コロナの影響もあり、私のとっている授業はほとんどがオンラインで行われています。が、週に一度月曜日だけはワクチン接種済み、又は1週間以内の陰性証明などの条件をクリアしたうえで対面での授業を受けます。文法などは上智大学で学んだことと被る部分も多いのですが、リスニングの授業が私には少し難しく必死についていこうとしています。私は春にザールラント大学によるオンライン講習を受けたのですが、今回とった授業にその時の先生がいらして「春もいたよね!」と話しかけてくださったのがちょっとしたハイライトです。

クラスメイトは国籍や年齢も様々で、19歳の学生もいれば子供がいるという女性も数人います。対面授業の時は休み時間にドイツ語や英語を駆使して雑談を交わし、授業後には連れだって昼食に行くこともあります。初めは友人ができるかなど不安もありましたが、今は週に一度の対面授業が大きな楽しみになっています。

まずいまずいと散々聞かされていたメンザ(ドイツの大学の食堂)もおいしく(これを言うとクラスメイトには微妙な顔をされます)、休み時間にはキャンパス内のカフェまでホットドリンクを買いに行ったりします。

2か月半を過ごして
この街で暮らしていくうちに、私の中ではドイツ人に対する印象が大きく変わりました。彼らは日本でたびたびイメージされるほど良くも悪くも「真面目」ではなく、そして想像よりずっとフレンドリーです。バスの運転手は運転をしながら片手でパンを食べ、バス停で居合わせた女性は私に時間を聞きバス来ないわね、と話しかけてくれます。こちらに来てすぐ、コインランドリーの前で使い方がわからず立ち尽くしている時、一から使い方を教えて柔軟剤まで分けてくれた人もいました。やさしい人が特別に多い、というわけではなく人に話しかけるハードルがきっと日本より低く、手を差し伸べやすいのではないかと思います。

また街中の広告でもドイツと日本の違いを感じます。HIVの啓発ポスターやアパレルショップの広告には当たり前に同性カップルと異性カップルが一緒に登場しますし、「大学生」に向けた広告に映るのはおそらく30代以上であろう女性だったりします。学食含むどこのレストランでもベジタリアン向けのメニューがとても多いことも印象的でした。ここに暮らす人や社会の価値観、考え方をふとした時に感じることができ、そうした発見があるたびに嬉しくなります。

初めは途方もなく長く感じた半年が、今はあまりに短く感じられてむしろ焦ってすらいます。残り時間でできる限り多くを学び、ドイツでの生活を楽しみたいと思いす。

現在は歴史博物館などに利用されるSaarbrücker Schloss(ザールブリュッケン城)

大学ではハラルやベジタリアンメニューに加えおにぎりも食べられます