VOL.11
2010年卒業
東芝
陳 珊珊さん

言語とその先にある文化や歴史を学ぶこと

みなさん、こんにちは。私は今メーカーでコンシューマ向けノートパソコンの商品企画をしています。働いているのは東京ですが、実際に私が企画した製品が販売されているのは日本ではなく、アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリア・中東等の市場になります。これら地域の同僚と日々コミュニケーションを取る際、もちろん仕事上の共通言語はドイツ語ではなく英語です。それでも、私は今本当にドイツ語学科で学んでよかったなと感じています。

みなさんもどうしてドイツ語を勉強しているの?と聞かれることがあるかと思います。正直に言うと私は特に何か強い意志があってドイツ語学科に入ったわけではありませんでした。ただ漠然と新しい言語を習得したい、知らなかった世界を知りたいと思っていただけでした。当時の私にとってヨーロッパはまさに未知の世界だったのです。

大学に入ると、それまで縁もゆかりもなかったドイツ語を必死に勉強することになるわけですが、言語を習得していくと自然とその国の文化や歴史に興味を持つようになります。大学ではドイツ語の文法や会話だけではなく、ドイツの政治・歴史・文化やドイツが中心的役割を果たしているEUや周辺諸国との関係等についてもたくさん勉強しますよね。今思うと、ドイツ語を通じて学んできたこれらのことが、漠然と思い描いていた『知らなかった世界を知りたい』に通じることで、文字通り私の世界を広げてくれたと思います。

3年生のときには1年間ケルン大学に留学したのですが、そのとき異なるバックグラウンドを持つ友人たちと本当にさまざまなことについて語り明かすという日本ではなかなかできない経験をしました。パスポートはドイツであっても、中東・アフリカ・南米・他のヨーロッパ諸国のアイデンティティを持つ友人がたくさんいました。そうするとニュースで流れてくる世界の事象が、不思議な感覚ですが、『本当に起こっていること』として実感できるようになりました。ドイツのことだけでなく、ヨーロッパ全体、深い関わりのある中東やアフリカなどますます多くのことに興味が沸き、意識して目を向けるようになりました。卒業して5年経つ今でも1-2年に1回くらいドイツには行くのですが、そのたびに友人たちからは新たな刺激をたくさん受けます。

さて、冒頭で仕事上の共通語は英語と書きましたが、ドイツ語を話す同僚とは場合によってはドイツ語でやり取りをしたりもします。また、他愛もない話を自然とよくするので(地理的・歴史的背景がわからないと理解できないジョークが通じるとか)、ヨーロッパの同僚とは特に仲が良くなります。文系である私たちが仕事をする上で非常に重要になるのがコミュニケーション力だと思います。多国籍企業で働く場合には、バックグラウンドの異なるさまざまな国の人々といかにスムーズにコミュニケーションができるかが仕事の半分以上を左右するのではないかと個人的には思っています。コミュニケーションを成立させるには、英語やドイツ語などの言葉が通じるということだけでは足りない場合があります。言葉の意味は通じても意図が通じないということはよくあることです。私はドイツ語を学んだことがきっかけで、これまで知らなかった世界のさまざまな地域や文化的背景に興味を持つようになり、複数の視点に目を向けるようになったことで視野が広がったと思いますし、今の仕事をする上でも役立っています。ぜひドイツ語というツールを通じてその先にある数多くの文化や歴史も積極的に知り、コミュニケーション力の土台を強化していってみてくださいね。

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