フランスで、フランス語圏をまなぶ!

税所萌葉

 

私は、2013年秋にフランス語学科を卒業した後、パリ第5大学の修士課程に入学しました。今年の6月に修士課程を終え、いまは博士課程を続けられるかどうか、応募した奨学金の結果を待っているところです。
 フランス語学科在籍中は、パリのイナルコという大学(フランス国立東洋文化言語研究所、Institut National des Langues et Civilisations Orientales)に一年間の交換留学をしました。大学で勉強した言葉を実際の生活で使っていくのはおもしろく、一方で外国語で自分の意見を伝えるむずかしさも感じました。それはボキャブラリーや発音の問題だけじゃなく、度胸の問題といったら言いすぎかもしれませんが、自分の殻をやぶって、外国語で相手がだれであれ、自分の意見を言えるようになる、、、これはいまでも自分の目標です!と脱線してしまいました。

 「レユニオン島マファット圏谷でハイキングというより登山でそのあとは一週間筋肉痛でした…。でも夜の星空にはとても感動しました。」

「レユニオン島マファット圏谷でハイキングというより登山でそのあとは一週間筋肉痛でした…。でも夜の星空にはとても感動しました。」

 

 交換留学から帰国した後もフランス語を続けたい、いつかフランスにまた戻りたいという気持ちが残り、フランスの大学院に進学することにしました。はっきりこれについて研究したい!というテーマは決まっていなかったのですが、フランスとフランス語を話すほかの地域の歴史や文化に興味があったのと、観光を通して地域のくらしを豊かにしながら、遺跡や自然も保護していくことはできるのか、ということに興味があったので、パリ第五大学人文社会学部の「人口と開発研究(Expertise en Population et Développement)」という修士課程のコースで勉強しました。
 この修士課程のコースでは、主に発展途上国のさまざまな問題(環境保護、移民、保健、人口に関する政策など)について、社会学、人類学、人口学の視点から学んでいくカリキュラムでした。
 ある地域の問題を解決するために、外国の企業やNGOなどがやってきて、いろいろなプロジェクトを企画して、実施するとします。たとえば干ばつが問題の地域で、水を引いてきて、飲み水を確保する。そのプロジェクトのおかげで水は行きわたっても、もしかしたら水をめぐってその地域に住む異なる部族間の対立を生んでしまうかもしれない。
 あるいは農業を支えるために政府が土地を分け与える政策をとったら、政府には所有者が特定されていない土地でも、その地域の複数の部族の間で代々受け継がれてきた土地だったかもしれない。こうしてその土地での暮らしを助けるためのプロジェクトが予想していなかった変化や影響をもたらすこともある。どうしたら悪い変化を避けることができるのか、何を基準にその人たちの暮らしが向上したといえるのだろうか。そんなことを考えようというコースでした。
 フランスの修士課程は二年間です。私が所属したコースでは毎年3か月以上のスタージュ(インターンシップのようなもの)と、論文の提出が求められました。私は、1年目はコモロという小さな国からフランスへ移り住んできた人たちについて調べました。コモロはアフリカ大陸の東側、マダガスカルのとなり、インド洋に浮かぶ3つの小さな島からなる国です。かつてはフランスの植民地だったこともあり、パリやマルセイユを中心にフランスに住むコモロ人がたくさんいます。私がインターンシップをしたのはコモロ本国で昔の遺跡や建造物を保護してユネスコの世界遺産登録を目指す団体で、その団体の活動について、フランスに住むコモロ人やコモロ系フランス人にアンケートをとるという内容でした。
 2年目は、ホエールウォッチングについてのスタージュをするために3か月レユニオン島に滞在しました。レユニオン島は、コモロのとなりの島、同じくインド洋に浮かぶ小さな島で、フランスの海外県です。

 

「レユニオン島のビーチ。週末は人がたくさんいます。(平日でも?)日かげではBBQをする家族もいました。」

「レユニオン島のビーチ。週末は人がたくさんいます。(平日でも?)日かげではBBQをする家族もいました。」

  近年、島のまわりを訪れるザトウクジラが増えてきているので、ホエールウォッチングを通してもっと多くの観光客を呼びこもうというプロジェクトがあります。そのプロジェクトの一環で、私のスタージュ内容は、捕鯨の歴史についてレポートを書きました。捕鯨に関してほとんど知らなかったのですが、20世紀のはじめまで世界的な大産業だったこと、くじらが捕獲される動物のひとつというイメージから、自然や動物を保護する活動のシンボルに変わっていったことなど、くじらをめぐる人間の行動や運動について調べていくと、人間と自然や動物の関係、国や文化による考え方の違い、国同士の力関係、そのときの政治や経済の状況などさまざまな要素が絡んでいて、とても興味深いテーマでした。日本人として捕鯨について賛成なのか、反対なのかと意見を聞かれることもありました。結局最後まで自分の立場を決めきれなかったこともあり、この先も自然と人間の関係、それが文化によってどう違うのかなどについて勉強していきたいと思うようになりました。
 この2年間の経験を通して実感したのは、フランス語や語学の勉強には終わりがないんだなぁということと、そのおもしろさです。フランス語で書いたり読んだりしていても、理解や表現のベースは日本語なので、日本語がとぼしいとフランス語ではもっととぼしくなるような気がします。なので日本語で読んだり書いたりすることも大切なんだなぁと思いました。また、フランス語を通して日本語では書かれていない文献から情報をえられたり、ひとつのテーマに関して、いくつかの言語の文献で調べることで、いろんな視点から勉強できたりしておもしろかったです。外国語はツールにすぎないとよく言いますが、自分の興味や出会いや行動の可能性を広げてくれるなぁと思います。今後の進路はまだわからないのですが、どこにいても、いまある環境を楽しんで、フル活用して、過ごしていきたいです。
 最後に、レユニオン島は、海、山、滝、火山と自然が豊かでとてもきれいなところでした。フランス本土、近隣の島やアフリカ、インド、中国などいろんなところから移り住んできた人がいるので文化もまざりあっていて、町の中にキリスト教の教会、イスラム教のモスク、ヒンドゥー教の寺院などをみることができます。町を行く人の肌の色もさまざまで、人も笑顔で迎えてくれる人が多く、とてもリラックスできる環境でした。そしてお米が主食のご飯はとてもおいしかったです。フランスからだと日本から行くよりも飛行機代が安くなるので興味がある方はぜひ行ってみてください!

「レユニオン島の火山ハイキング。溶岩がかたまった上を歩くのは、ほかの惑星に降り立ったみたいでおもしろかったです。」

「レユニオン島の火山ハイキング。溶岩がかたまった上を歩くのは、ほかの惑星に降り立ったみたいでおもしろかったです。」