エクス・マルセイユ大学でアフリカ研究

杉山由佳

 私は2015年8月末から2016年6月まで、交換留学生として南フランスのエクス・マルセイユ大学で文学部に所属し、文化人類学、主にアフリカの文化人類学を勉強しています。かなり平たく言えば、ヒトの作り出した文化や社会構造、生活や営みを研究する学問です。上智では中東北アフリカ研究コースにおいて、アフリカ研究を専攻しアフリカの歴史、政治、経済など幅広く学んできました。 

アフリカ あふりか 阿弗利加 Africa・・・・・。

日本でアフリカと聞くと、なんだかダークな貧困や紛争、未開といったイメージが強く、開発援助の対象というフィルターをかけがちな印象を持ちます。そういったフィルターをかけずに、ただ単にアフリカの国々について知りたいと思い文化人類学を選びました。

なぜエクス・マルセイユ大学なのか?
 
そんなにアフリカが好きならアフリカに行けばいいじゃない?ごもっともです。実際、休学でもしてぽいっとアフリカに行こうかなと考えた時期も…。現地で実際見聞きしたほうが、価値があるのではないかと。しかし、アフリカについて学ぶための資料や文献、そしてその分野を研究している教授はフランスをはじめとする欧米にいるのが現状です。エクス・マルセイユ大学もアフリカ研究が盛んな大学の一つです。大学の近くには旧植民地に関する古文書館があり、アフリカ出身と思しき研究者たちが熱心に自国に関する資料を読み解いていたのが印象に残っています。またフランスとアフリカの多くの国の関係は歴史的にも深く、アフリカの国々について勉強するうえでその関係は無視できないと考えました。
 大学の授業は交換留学生であれば、学部を超えたすべての授業の履修が可能です。周りでは言語学や社会学、文学、芸術、法学などの授業をとっている留学生がいました。私は主に文化人類学入門やアフリカ文化人類学、アフリカ史などを履修しました。文化人類学は専門的な語彙が多いので、友人にノートを見せてもらって理解することをおすすめします。
 また、留学期間中の8月にセネガル、2月にエチオピア、5月にチュニジアを訪れる機会にも恵まれました。フランスからだと近いので飛行機も安く済みます。実際に現地にいって見聞きすること、そして新たな発見をフランスに持ち帰り、資料をさがして机で学ぶこと。この2つのプロセスを通して、本当のアフリカの現状が見えてきたと思います。

セネガル・エチオピア・チュニジア
 
私の留学生活は「第0章セネガル編」から始まりました。東京に留学に来ていたセネガル人学生と偶然知り合い、彼女の帰省について行く(押しかける)ことができたのです。日本を出発し、首都ダカールに1週間滞在した後、マルセイユに入りました。現地ではフランス語も使われているので語学のウォーミングアップにもなりました。友人宅に滞在しつつ、現地の生活を観察。古くから西洋との貿易港だったダカールは車が行きかう都会のイメージを持ちました。西洋風の建物や、バゲットを売っているパン屋などフランス植民地時代の影響も見えつつ、庶民の間では広くイスラム教が浸透しているようでした。
 そして冬に訪れたエチオピアはまた、がらっと雰囲気の変わった国でした。アフリカにおいて、植民地支配を免れた唯一の国エチオピア。独自のエチオピア正教とイスラム教がベースとなり、その上にさまざまな民族がひしめき合う国。アフリカっぽくないちょっと内気な人柄が印象的でした。また、エチオピアでは多民族国家を治める政府の圧力とそれに反発する勢力の間で起きる摩擦を肌で感じました。
 チュニジアには大学で日本語を勉強していたチュニジア系フランス人と知り合い、彼女のお家にお邪魔しました。(またもや押しかけ?)イスラム圏といいつつも、リベラルで陽気な、のんびりとした人が多い印象でした。普段はマルセイユで暮らしている友達も、チュニジアに帰るとアラビア語で話し、伝統的な生活を守りながら生活をしていました。

チュニジア、ジェルバ島のエル・メイ地区にて。中学校の地理・歴史の授業で日本について話す機会がありました。意外にも女の子たちがすごく活発で、質問をする手がずっと上がっていました。中学生男子はどこの国でもシャイなのか・・・?

チュニジア、ジェルバ島のエル・メイ地区にて。中学校の地理・歴史の授業で日本について話す機会がありました。意外にも女の子たちがすごく活発で、質問をする手がずっと上がっていました。中学生男子はどこの国でもシャイなのか・・・?


セネガル、ゴレ島。奴隷貿易時代にここから多くの奴隷が新大陸に運び出されました。ここを発つと二度とアフリカには戻れない。そんな島も今ではビーチに人がにぎわう観光地。

セネガル、ゴレ島。奴隷貿易時代にここから多くの奴隷が新大陸に運び出されました。ここを発つと二度とアフリカには戻れない。そんな島も今ではビーチに人がにぎわう観光地。

マルセイユという町
 
フランス留学なので、アフリカの話ばかりではなくフランスの話もしなくては…。エクス・マルセイユ大学は、エクス・プロバンスとマルセイユの両方にキャンパスがあり、両方の授業をとれます。私も、寮はエクスでしたが、週1でマルセイユの授業を受けに行っていました。
 フランス第2の都市、マルセイユ。近年芸術都市として整備され、とてもモダンな街になりつつあります。しかし、一つ路地を曲がると北アフリカの香りがむんむんです。北アフリカの食料品店が軒を連ね、安くて量がめちゃくちゃ多いコスパよしのセネガル料理屋もあり、なんとも楽しい。港で船を見ながらアイスを食べてもよし、自転車を借りてビーチに行くこともできてなお楽しい。

マルセイユのCours Julienという地区は、もはやアートな落書きでいっぱいです。芸術家が多く住み、ギャラリーも多く創造性であふれている!!!!!!!!

マルセイユのCours Julienという地区は、もはやアートな落書きでいっぱいです。芸術家が多く住み、ギャラリーも多く創造性であふれている!!!!!!!!

言葉は扉を開く
 
“La langue ouvre la port” 「言葉は扉を開く」セネガルで友人のお父さんに言われた言葉が忘れられません。フランス語を習い始めたときは、私の興味関心がこんなに遠くまで来るとは思っていませんでした。私の場合、フランス語という言葉が扉を開き、そのたどりついた先がアフリカでした。。皆さんが扉の先でたどりつく物は何でしょうか。