VOL.2
2000年卒業
ピースボート/インターナショナル・コーディネーター
渡辺 里香さん

完璧な英語よりも、「グローバルイングリッシュ」の大切さ

現在はどこで、どのようなお仕事をなさっていますか。

年に3回地球一周の船旅を企画する国際交流NGO、ピースボートで働いています。日本と、訪れる各国からの講師やエンターテイナーと一緒に洋上の平和・環境・文化プログラムを開催したり、寄港地で現地の人々と一緒に文化交流や検証ツアーを行います。 その中で、私の仕事は東アジアの平和構築をテーマにしていて、たとえば船が香港や台湾に船が寄港する際に事前に現地入りして1000人の参加者向けに現地プログラムを作る仕事、日本と韓国から参加者を250人ずつ乗せて、日韓合同でアジア一周のクルーズを出す企画、「武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ」という国連が呼びかけたNGO会議の東アジア支部のとりまとめなど多岐にわたっています。最近、一番熱を入れて取り組んでいるのが、ヒバクシャ100人を船にご招待し、世界中で証言をするという「ヒバクシャ地球一周証言の航海」プロジェクトです 。 

英語学科で学んでよかったと思うことは何ですか。

卒業後も変わらずに語らえ、お互いの生き方を尊敬できる、素晴らしい友人に出会えたこと。また、私の場合は帰国子女やインタナショナルスクール卒業という経歴ではなかったので、英語学科での学びや出会いから、語学や知見、知識など広く奥深い世界の「初めの一歩」を踏み出すことができました。そして、今の仕事にめぐりあってからは、NGO業界や国連機関などで生き生きと働く英語学科卒業生にたくさんお会いします。とても嬉しく、心強く感じ、勇気をもらっています。

なぜ、現在の職場を選んだのですか?

国際交流の船旅ピースボートには、最初「日英の通訳ボランティア」として乗船しました。初めは、それ以前に務めていた外資系コンピューター会社との違いに驚くことばかりでしたが、次第に日本人として生まれた自分が英語を学ぶことで見えてきた、見たかった世界が地図の中ではなくて、まるで自分が地球儀の上にでも立っているような身近な感覚が現れてきました。先進国の生活しか知らない自分にとって初めて出会う、アフリカの貧困、ラテンアメリカの搾取されている先住民、生活苦であろうと思ったキューバの人々の楽しいサルサ、そして日本と長い歴史を共有する中国、韓国、台湾などのアジアの人々と思い。

世界から選りすぐりの素敵なゲストや留学生40~50人と一緒に世界18か国をめぐる3ヶ月間の船旅。地球の人々や空気を「五感をビンビン働かせながら」感じる経験であり勉強です。この体験を一人でも多くの人と共有したくて、今の仕事を続けています。

「英語」の必要性がますます高まっていますが、それについてどのように感じていますか?

今もこれからも「英語」の必要性はどんどん高まると思います。その意味で、英語学科で学ばせて頂けたことは大変有意義なことでした。

英語を母国語としない者として完璧な英語を目指すよりも、言わんとする意見を持ち、それを世界の多くの人に伝え議論するための「グローバルイングリッシュ」であることの方が大切であると、日々痛感しています。まずは自分が一人の人間として何を考え、何をして生きていくのか、それを日本語でも英語でも自由に表現できれば、目の前の世界はもっともっと広がると思います。

今後の夢をお聞かせください。

日本でテレビや新聞に登場するニュースからは、世界がどれだけ素晴らしい場所であるかということよりも、世界にどれだけ問題があるかということばかり伝わってきます。地球には、まだまだ美しい場所がたくさんあり、美しい人がたくさんいます。二児の母となった今、素晴らしい地球を子どもたちと一緒にみつめ、どうやったらそれを生かせる社会を作れるかを考えていきたいと思います。「21世紀になっても紛争も貧困もなくならない」という悲惨さだけを伝えるのではなく、実は世界の軍事費のほんの1割でも削減することができたら世界中の子どもたちが学校に行けるようになる、核軍縮だって少しずつ進んでいる・・・というようなことを一緒に学んで、じゃあ自分たちはどう動いたらいいかを一緒に考える大人でいたいと思います。こんな夢を抱きつつ、来年(2013年)には家族4人で地球一周の船旅に旅立つ予定です。

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