海道の東南アジア
村井吉敬
 東南アジアの海辺の旅ではたくさん不思議な南海産品に出会った。 東南アジア学の先達である故鶴見良行さんが「南海特殊産品」と命名した産品のことです。 これら南海産品にはつぎのようなものがあります。

 白蝶貝、高瀬貝、ナマコ、フカのヒレ、ベッコウ、ツバメの巣、ジュゴンの牙、竜涎香 (りゅうぜんこう)、極楽鳥、オウム、トリバネアゲハ、各種香木、鹿の角、 蜜蝋等これらの山海の珍しい産品を産する地域は多くは東南アジアの海域世界です。 国でいえば、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ビルマ南部、 タイ南部などが東南アジア海域世界です。ここはおそらく世界一の多島世界といえます。 赤道を挟んで無数の島々がエメラルドのように散らばった美しい世界でもあります。 島々は緑豊かな熱帯雨林やマングローブ林に覆われています。 この美しい多島海に産する珍品をめぐって人々が集散し、モノが運ばれ、歴史がつくられてきました。 ごく大ざっぱにいうと、この多島海の産品は古くから中華世界へと運ばれました。 「海の南北シルクロード」とでもいえっておきましょう。ティモール島は白檀の原産地でもあり、 この白檀は紀元前後にすでに中国に運ばれていたといわれます。 南洋真珠の母貝でもある白蝶貝もまた螺鈿細工の原料として中国宮廷に運ばれていたかもしれません。 もちろん天然の真珠玉なども珍重されたに違いありません。 その引き換えに、中国からは絹織物、銅鑼、陶磁器などがきたのです。 この南北シルクロードは時代によって濃淡はあるものの、 多島海世界がすっかり植民地化されてしまう今世紀はじめくらいまでは脈々と時代をつないできています。
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