講演会

ラテンアメリカ・レクチャーシリーズ②「歴史のなかのラテンアメリカ像―立場によって異なるイメージとその背後にある力学― 」(全2回)

講師

第1回
「スペイン帝国の歴史書のなかのインカ―16世紀後半を中心として―」[10月15日]
内村俊太(上智大学外国語学部助教・イベロアメリカ研究所所員)

第2回
「黒人運動家にとってのブラジル―20世紀前半の黒人新聞を中心に―」[10月22日]
矢澤達宏(上智大学外国語学部教授・イベロアメリカ研究所所員)

日時2015年10月15日(木)、22日(木)17時00分~19時00分
場所

上智大学中央図書館8階821会議室

使用言語

日本語

参加費/予約

参加費無料/予約不要

概要

第1回「スペイン帝国の歴史書のなかのインカ―16世紀後半を中心として―」

先住民国家としてのインカは1533年に解体し、アンデスにはスペインによる植民地国家が築かれました。しかし、スペイン王権は現実の支配機構を整えるだけでなく、「アメリカ史」編纂をつうじてインカ史の意義を否定し、スペイン帝国の正統性を構築することにも力を注ぎました。それは、勝者が一方的に「敗者の視点」を踏みにじる行為と言っていいでしょう。しかし、スペイン帝国の歴史書のなかでインカがどのように描かれたかを分析することは、ヨーロッパ近世国家が他地域の歴史をどのような語彙と論理で解釈し、歪曲していったかという、植民地支配を支えた理論的な柱のひとつを歴史学として明らかにする作業になるでしょう。

第2回「黒人運動家にとってのブラジル―20世紀前半の黒人新聞を中心に―」

ブラジルは植民地開発にともない大量のアフリカ人を奴隷として導入し、独立以後も国民の半数以上が混血を含むアフリカ系の人々で占められてきました。それゆえ「ブラジル(人)とは何か」を問うとき、黒人の存在を抜きには考えられません。実際、植民地期よりブラジルは「人種の天国」、すなわち人種偏見など存在せず、異人種間の融和が実現している地であるとしばしば語られてきました。しかし実際には、奴隷制が廃止された後も、黒人は白人とのあいだに明白な経済的格差を抱え、人種偏見・差別にもさらされてきたのです。ブラジルについて流布していたイメージと、黒人が現実に日々体験していた実態とのギャップを前に、黒人運動家はどのようにとらえ、どう発信したのでしょうか。20世紀前半に発行された黒人新聞の紙面から、この問いについて考えてみたいと思います。

ポスター画像

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