研究会・講演会など

Christopher Kilmartin講演会

報告 Christopher Kilmartin先生をお招きし、“American Manhood and Its Connection to Masculinity Ideology and Gender Violence”という題目でお話しいただきました。本講演は、アメリカ文化に満ちたmasculinityの固定概念とそれによる性暴力の危機を明らかにし、社会の変革のために何ができるかを考えるというものです。
初めに先生は、ジェンダーの分極化や社会的慣習によりジェンダーの規範が幼少期から刷り込まれており、こうした社会的抑圧に抗うことが難しい現実があると指摘します。masculinityの概念を探るために取り上げられたアメリカ映画では、女性は男女の友情が成り立つと考える一方で、男性は不可能だと考えますが、このようなロマンティックコメディにおいては常に男性の粘り強さが勝利し、実際にこの映画の結末で2人は恋人になります。しかし会場にいる参加者に聞いてみると、異性の親友がいるという人は多くおり、フィクションと現実が異なることも分かりました。また、masculinityを売りにするテレビCMがいくつか紹介される一方で、こうした男性のステレオタイプに疑問を投げかける広告も紹介されました。男女でガウンの色が異なる大学卒業式の様子など、性差別的な慣習が日常に潜んでいることも示されました。男性が密かに女性に対し性的な視線を投げかける宣伝ポスターは、性犯罪を誘発していると指摘されます。男らしさについての社会的規範、すなわち勇敢で忠誠心が強く、自立した男性という観念がいまだ根強くあり、こうした物語の根源は、アイデンティティやセクシュアリティを商品として売り出す市場にあると先生は述べます。最後に、ジェンダー問題の背景がピラミッド型の図式で説明されました。ピラミッドの頂点には犯罪者がおり、その下には文化的規範の保持者、性差別主義、不平等や権力の相違が順に並びますが、先生はピラミッドの下部、すなわち最も多く社会に広まっている要因を変えることから始めなくてはならないのだと述べました。
質疑応答では日常的に見られる性差別的な慣習についての議論や、男女格差が改善されたとされる現代社会に潜む不平等の実態についてなど、より深い議論が展開されました。(報告:英米文学研究科博士後期課程 三原里美) 参加人数:約40名
テーマ American Manhood and Its Connection to Masculinity Ideology and Gender Violence
講師 Christopher Kilmartin(The University of Mary Washington名誉教授)
日時 2019年11月13日(水)17:20- 18:50
場所 上智大学中央図書館・総合研究棟(L号館)8階 821号室
参加自由・申込不要
使用言語 英語
概要

American culture is rife with ideologies that can cause damage both to men and to people around them. In this presentation, we explore the social construction of masculinity in mainstream American culture and its connection to intimate partner violence, stalking, and sexual assault, and describe efforts toward cultural change.

共催 基盤研究(C)マジョリティに向けた多様化社会の公正教育の在り方