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著者と語るシリーズ『フランク・オハラ 冷戦初期の詩人の芸術』を語る

テーマ  著者と語るシリーズ『フランク・オハラ 冷戦初期の詩人の芸術を語る
報告 飯野友幸先生をお招きし、著書の『フランク・オハラ:冷戦初期の詩人の芸術』について語っていただきました。初めに先生はオハラが即興で書いた“Poem”(1962)という詩を取り上げ、当時corporate liberalismによる官僚支配や文化の画一化への反発として即興が度々使われていたことに触れます。このように新たな時代の潮流の中で生まれた絵画や音楽を紹介しながら、オハラが影響を受けた抽象表現主義の拡大について先生は語ります。当時、左翼への傾倒から一転し国粋主義的な取り組みとして、アメリカが自由主義、民主主義であるというイメージを発信しようとする展覧会が開かれるようになりました。芸術そのものの意味を追求しようとする画家たちがprimitivismへの回帰を試みていた一方で、彼らの作品は冷戦のプロパガンダとして政治的に利用され、“victory narrative”、すなわち世界の芸術の中心がパリからニューヨークに移ったとする言説に巻き込まれたのです。オハラの同じく“Poem”(1959)と題された詩は、フルチショフが初めて訪米し冷戦の緩和に向け完全軍縮を提案した時代に書かれたものですが、詩の主題はすぐに脇道に逸れ、散漫で曖昧な書き方になっていきます。オハラの詩は冷戦に関心を示しながらも、victory narrativeには乗じず政治性を周縁化しているのです。同様に、アイゼンハワーの封じ込め政策による同性愛排除の動きの中で、ゲイであったオハラも抑圧される存在でしたが、彼は詩を通して何らかの主張をすることはほとんどありませんでした。オハラは特権化されない詩人であり、謙遜さこそが彼の特徴であると先生は締めくくります。
一見すると散漫に見える詩に表れたオハラの芸術的態度を通して、冷戦期における芸術と政治との緊張関係を垣間見ることができました。質疑応答でも様々なアイディアが出され、オハラの時代への理解が深まりました。(報告:英米文学研究科博士後期課程 三原里美) 参加人数:11名
日時  2019年7月4日(木)17:30-19:00
場所  上智大学 中央図書館 L-721A (アメリカ・カナダ研究所)
使用言語  日本語
講師

飯野 友幸 (上智大学 英文科 教授)

 190704 飯野先生
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