成果公開

研究発表

WOCMES Seville 2018(Fifth World Congress for Middle Eastern Studies)での研究発表(2018年7月16日(月)~22日(日)セビーリャ)

《PA-241》 Visits to Saintly Places in the Age of Globalization
【オーガナイザー】赤堀雅幸(上智大学)
【日時】2018年7月19日(木)14時30分~16時30分
【場所】セビーリャ大学120室
【座長】安田慎(高崎経済大学)

【研究発表】
東長靖(京都大学):Theoretical Basis for the Visit to the Saints’ Places in the Islamic Thought
安田慎(高崎経済大学):Remembrance of Holy Places: Religious Capital and Syrian Shi’ite Religious Sites in the Era of Crisis
山本健介(京都大学):Revitalizing Holy Places and Urban Society in Nostalgia: Collective Pilgrimage Campaign to Al-Aqsa Mosque and Socio-Economic Dynamics of Jerusalem
三代川寛子(東京外国語大学):The Discovery of the Pilgrim City of Abu Mena and the Revival of St Menas Veneration

 本パネルは、オーガナイザーの赤堀氏による挨拶文を、座長の安田氏が代読する形で始まった。挨拶では、これまでの日本におけるスーフィー・聖者研究会の歴史や活動内容、これまでのWOCMES参加状況が紹介された。

 次に、東長氏による研究発表では、まず、聖者に関する理論や聖者崇敬はイスラームの中の「小伝統」に属するのか、聖者とはイスラーム学的に正統性の根拠を見出せる存在なのか、そして聖者に関する理論と聖者崇敬の実践の間に大きな差異が見いだせるのか、という問いがたてられた。発表者は、聖者を意味するワーリーという語はクルアーンやハディースにも言及があることから「大伝統」に属する存在であることを指摘した。加えて、聖者の5類型を示したのち、それらの聖者の大半が、その聖性の根拠をイスラーム学的に説明できることを指摘した。さらに、ズィヤーラ(墓所参詣)がハディースで言及されていることなどから、聖者崇敬の実践はイスラーム学的な理論に沿ったものであることを指摘した。

 安田氏による研究発表では、2011年以降のシリア危機の中で、シリアのシーア派の聖地における宗教資本ネットワークがどのように変容したかという点が議論された。最初に、シリアの治安が悪化し、シーア派の聖地における宗教建造物の破壊や宗教指導者の暗殺が広がる中で、聖地を守ろうとするシーア派民兵が現れているという背景が説明された。次に、直接聖地を訪問することができない一般信徒たちの間で代替となる行為が模索されており、個人レベルでは過去に聖地を訪れた経験が想起され、ナラティブが形成されていること、そして集団レベルでは聖地を想起し、聖地を守って亡くなった人々を記念する行事を行う運動が現れていることが指摘された。それによって、新たな形で宗教資本の流れが形成されていることが指摘された。

 山本氏による研究発表では、エルサレムのアクサー・モスクへの巡礼を事例として、聖地とそれを取り巻く都市社会との関係について分析がなされた。最初に、1990年代以降、イスラエル政府がパレスチナ人に対して課してきた移動の制限により、エルサレムの社会的・経済的停滞が発生しているという背景が説明された。次に、「イスラエルにおけるイスラーム運動」によるアクサー・モスクへの巡礼キャンペーンが紹介され、それが地元経済の活性化をも目標としていたことが指摘された。加えて、同運動によるアクサー・モスクの文明的意義についての意識向上を目指す教育プロジェクト、そしてアクサー・モスクが地域住民らによって結婚契約の場、学校の校庭、休憩の場などとして使用される例が示された。それを基に、「聖地」であるアクサー・モスクとそれを取り巻く社会の関係は、聖/俗の二元論を超えて、より包括的な観点から論じられるべきであるとの指摘がなされた。

 最後に、三代川氏は、エジプトのコプト正教会における聖メナス崇敬の復興運動を事例として、聖人崇敬とナショナリズムの関係について論じた。最初に、背景の説明として、聖メナスとは、紀元3世紀末ごろを生きたエジプト出身の殉教者・聖人で、この聖人の埋葬地は巡礼都市アブー・ミーナーとして多くの巡礼者を集めていたこと、そして、エジプトのイスラーム化以降は巡礼が途絶えて忘れ去られていたが、20世紀初頭にその遺跡が発掘されたことが指摘された。次に、第二次大戦中にギリシア正教徒らが同遺跡の近郊で聖メナスによる奇跡を経験したことを受けて、それに対抗する形でコプト正教会の信徒らが聖メナス崇敬の復興を始めたことが指摘された。聖メナス崇敬の復興運動を担った人物の主張を分析し、それを基に、この復興運動は、エジプトの脱植民地化、ナショナリズムなど当時の社会情勢から影響を受けたものである可能性が指摘された。

 本パネルの会場はやや奥まった小講堂であったにもかかわらず、最終的に18名の参加が得られた。各発表に対して複数の質問が寄せられ、活発な議論が行われた。


(文責:三代川寛子 東京外国語大学言語文化学部講師)

成果公開

  • 上智大学・早稲田大学共同研究 アジア・アフリカにおける諸宗教の関係の歴史と現状
  • 上智大学 イスラーム地域研究(2015)
  • 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
  • 国立民族学博物館現代中東地域研究拠点
  • 東京外国語大学拠点
  • 京都大学拠点
  • 秋田大学拠点
  • 早稲田大学 イスラーム地域研究機構
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