卒業生の声

駆け出しの研究者より

2007年度卒業生 松浦晶子(国立公文書館アジア歴史資料センター研究員)
日本近現代史の勉強のために訪れた、広島県呉市にて(2018年5月撮影)

日本近現代史の勉強のために訪れた、広島県呉市にて(2018年5月撮影)

私は2004年度に史学科に入学し、さらに史学専攻博士前期課程・後期課程に進学、2016年度に満期退学しました。アットホームな居心地の良さに、十二支が一周するまで居座ってしまいました。現在は、国立公文書館アジア歴史資料センターの研究員として勤務しています。

史学科を一般受験したときは、『燃えよ剣』など幕末物の小説に熱を上げていたので、選択科目は日本史でした。一方で、大学では新しいことを学びたいとも思っていました。入学後、1年次の必修授業であった日本史・東洋史・西洋史の各概説を受けてみて、何だか面白そうだと直感した東洋史に転向し、中国史がご専門の大澤正昭先生のゼミに入門しました。

世界史はほとんど履修していなかったので、初めはついていくのに必死でした。しかし2年次、3年次とゼミで勉強を続けるうちに、少しずつ知識も増え、次第にその奥の深さにはまっていきました。現在の研究テーマである東アジア音楽史と出会ったのもこの頃です。博士課程に進学すると、大澤先生からの猛特訓を受け、難解な漢文も分厚い辞書と格闘しながら何とか読めるようになり、学術論文を書き上げるまでに成長していました。

大澤院ゼミで訪れた中国杭州・霊隠寺の石仏群。共著の調査報告書も発表しました(2013年2月撮影)

大澤院ゼミで訪れた中国杭州・霊隠寺の石仏群。共著の調査報告書も発表しました(2013年2月撮影)

研究生活は充実していた一方、将来への不安が日増しに重くのしかかるようになりました。あれこれ悩んだ末に満期退学をして一般就職したのですが、その後アジア歴史資料センターの公募に思いがけず合格し、大澤先生の叱咤激励もあり、思い切って転職しました。

近年、歴史資料のデジタル化が急速に進められています。そのため、資料館に直接赴いて利用請求をしなくても、PCなどがあればいつでもどこでも資料を閲覧できるようになり、研究の利便性は飛躍的に向上しました。さらに、研究者だけでなく一般人や外国在住の方でも資料にアクセスしやすくなり、多様な歴史解釈を可能にする土台が築かれつつあります。

アジア歴史資料センターは、そのような取り組みの先駆けであり、国内最大規模を誇るデジタルアーカイブです。母体である国立公文書館をはじめ、防衛省防衛研究所や外務省外交史料館から提供を受けた歴史資料のデジタル画像を、インターネット上で無料公開しています。

私のメイン業務は、データベースの構築です。デジタル画像の受け入れやメタデータの作成、検索ツールの整備などを担当しています。歴史学だけでなく情報学の知識も要求され、膨大なデータと格闘する毎日で、疲れもたまりがちです。しかし、地道な作業が苦にならない性格なのと、普段自分の利用するデータベースがどのように作られていくかを直に知ることができるので、やりがいを持って取り組んでいます。

ただし、楽しいことばかりではなく課題もあります。博士課程でやり残してしまった学位論文の執筆です。仕事と論文の両立は大変で、平日の夜や休日を使って資料を集め論文を書いています。受験生の皆さんも勉強漬けで苦しい時期だとは思いますが、自分を信じて、お互いに頑張っていきましょう。なお、私は論文執筆のため定期的に史学科に行きます。来年あたり、皆さんにお会いできたらとても嬉しいです。

上へ戻る