卒業生の声

卒業生近況報告

1996 年度卒業生 三木 崇 (文教大学付属中学高等学校 社会科・地理歴史科教諭)
今後も試行錯誤しながら自分なりの授業スタイルを追及していきたいと思っています。

今後も試行錯誤しながら自分なりの授業スタイルを追及していきたいと思っています。

私は大学卒業後、東京都内の私立中学高等学校で社会科・地理歴史科の教員として勤務しています。主に高校生の世界史を担当しています。

教員として、教科やクラス、バドミントン部の指導にあたることはもちろん、学校行事に向けた業務、学校の広報や入試に関する業務、進路指導業務、学校改革業務などにも取り組んでいます。私立学校は組織としてそれほど大きくはないので、やらなければいけない仕事が多岐に渡り、目が回りそうになることもありますが、自分がトライすべきだと考えていることを組織全体として実践してもらえるチャンスも多く、そういう面の楽しさもあります。ただやはり一番の喜びは、何と言っても、明るく元気な生徒たちと共に、かけがえのない学園生活を送ることです。合唱コンクールの時には教員合唱団で歌う、文化祭の時には教員バンドで歌う、と、行事があるたびに生徒に負けじと私が楽しんでいます。

教師の最も大切な業務はもちろん授業です。残念なことですが、私は教員となってから、実に多くの「歴史」嫌いの生徒がいることを知りました。大抵の場合理由は「暗記が苦手だから」。確かに「歴史」においては最終的には暗記作業も必要とされますが、その前段階として「流れの理解」も不可欠です。ですから授業をする時には、できるだけ「分かりやすい図式」と「分かりやすい例え話」を盛り込みながら、本当は複雑である歴史の流れをできるだけ単純化し、生徒が理解しやすいように提示することを心がけています。今後も試行錯誤しながら自分なりの授業スタイルを追及していきたいと思っています。

大学時代は本当に先生方に恵まれていたと思います。特にゼミ担当の大澤先生や坂野先生には大変お世話になりました。当時から上智大学は少人数教育が徹底されていて、先生方には本当に細かくご指導をいただきました。史学科の講義は、スッキリと整頓された高校の教科書に対する個々の反証から始まるため、私にとって大学での学びは、受験で培った美しい歴史観が一気に崩れ去るところからのスタートとなりました。その中で私なりに掴んだ「史学」とは、「まずは全体(一般的に言われている「歴史の流れ」)を大局的に把握し、その上で全体を構成する個々の要素の問題点・矛盾点に着目し、自分なりの手法でその点を掘り下げ、解決案や新観点を提示する」作業だと考えています。そしてこれは、史学とはまったく関係のない、ありとあらゆる分野・職種に応用できます。史学科での学びは、膨大な情報を整頓し、全体像を見定め、個々を分析し、そこから新観点を導き出すための洞察力につながります。この力は誰にとっても、社会に出てから大きな武器となるのではないでしょうか。

私が大学4年生だった当時はインターネットを使った教員募集が少なくとも一般的ではなかった時代で、教職志望者はまず掲示板を確認し、気になる学校があったら就職課の部屋に入り、配置されている求人情報や資料に目を通す必要がありました。地理歴史科教員の求人が少なく、行き詰っていた私に対して、就職課の方は「本当に勤務したい学校があるのなら、ただ情報を待っているだけではなく、自分からその気持ちを適切に伝えなさい」というアドバイスを下さいました。その後私は早速、興味ある学校に教職への熱意を訴える手紙を送り、結果として、手紙を送ったうちの一校に現在勤務しています。また、ちょうどこの頃私は怪我をし、外出ができない日が続きましたが、そんな中、私と同じゼミに所属し同じく教員志望の人たちが、チェックした情報を電話で伝えてくれました。そのことがどれだけ自分の励ましになったか分かりません。上智の史学科に在籍し、先生方、就職課の方、同じゼミの仲間と偶然にも出会うことができ、そしてそういう人たちの暖かい支援の結果として、現在の自分がいることを今でもつくづく実感しています。今度は自分の番です。自分との出会いが、その人の人生にとってのプラスとなれるような存在、そうなれることが今の自分にとっての最大の目標です。

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