卒業生の声

コブラツイストと鉄道と私

2013年度卒業生 木幡美里(現運輸業、関東エリア配属)

南フランス・エズ地方にて撮影

私が近現代史ゼミを語る上で切っても切り離せないのが、「コブラツイスト」です。

大学1年の冬、当時の私は日本の近代化をやろうとぼんやり考えていました。そんな中、友人から紹介された史学科ブログのゼミ紹介記事を読んでいくうちに、近現代史ゼミコーナーの「コブラツイスト」という言葉に出会いました。記事は、「君は飲み会の席でコブラツイストをかける先生に興味はないか?」という文にはじまるものだったと記憶しています。一体何をどうすればコブラツイストが出るのかと困惑しながら、ゼミ面談に向かったのはいい思い出です。しかし、それとは裏腹に、丁寧なゼミ説明をいただいたことで、ならばこのゼミにしようと決めた次第です。

そんな思いを抱きつつゼミ生となって驚いたのが、自由度の高さです。例えば、課題の一環にブックレビュー提出がありましたが、その内容はゼミで扱った史料に関するものであれば、自分で自由にブックレビュー用の書籍を選び、考えたことを好きに記述してよい、というものでした。最初はその自由度に戸惑いましたが、それが文献収集や専門書の要約、ひいては自ら考える練習になっていたのだと思います。そして何より、長田先生はどのゼミ生に対しても、決して見捨てることなく最後まで面倒をみてくださいました。それは、普段講義をされている姿からはなかなか想像できない、先生の人間味溢れる一面だと思います。ちなみに、飲み会の席でコブラツイストの謎に迫ったところ、あっさりとお答えをいただけました。その真偽についてあえてここでは語りませんが、何気ないことでも聞ける距離感が、近現代史ゼミのいい雰囲気を醸し出していたように思えます。

大学卒業後の現在、私は一鉄道員として某駅に勤務しています。駅勤務といっても想像がつきにくいと思いますが、24時間体制で泊まり込み、改札での精算や切符の発券、乗り換え等のご案内をするなど、実に様々な業務にあたっています。学生時代とは別世界の毎日を送っている訳ですが、特に違うのは相対する人の数です。学生時代は限られた範囲の交流に留まっていましたが、職業人となった今は、駅に来られるあらゆる方をお客さまとして遇しています。様々な方と接することが、今の私にとって一番の刺激になっており、駅にいながら視野が若干広がったようにも感じられます。一方で、すばやく正確に判断することが求められるのも、大学生活とは異なる点です。特に、判断を一歩誤れば命にかかわる大事故につながりかねないので、職務上の責任の重さも痛感しています。

よく、なぜ史学科から鉄道業界を志望したのか聞かれます。確かに、史学から運輸、というのは結びつけにくいところがあると思います。実際、志望理由は端的に言えば「やってみたかったから」につきますし、史学との関連性も今のところ見えていません。しかし、自分の専攻が直接業務に関わることはなくても、大学時代に培った思考力は、あらゆる場面で役に立つものであると思っています。特に、答えのないものに結論を見つけるのは、文学系の強みです。ですから、これから進路を考えられる方には、「文系だから」「史学科だから」という理由で諦めるのではなく、自分が本当にやりたいことを、広い視野でもって考えてほしいと思います。

出雲大社前駅にて

 

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