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外国語学部について

外国語学部で学ぶということ

外国語学部長 村田 真一

 入学したばかりのみなさんも、本学部で勉強を続けているみなさんも、新しい言語をしっかりマスターして世界へ飛び立ちたいという大きな目標を掲げ、学習意欲をかきたてていることでしょう。私たちは、そのような心意気に応えるべく、みなさんと向き合っていきたいと思っています。

 (1) 外国語学部は何を学ぶところか
 外国語を学ぶのは、とてもワクワクする体験です。みなさんが思い描いているイメージは、外国語が上手に話せるようになって、学習対象にしている地域の人たちと自由にコミュニケーションがとれるようになる「異次元体験」でしょうか。あるいは、イメージのレベルを超えて、本格的な地域研究にとりかかる計画を着々と進めている人もいるかもしれませんね。
 スタート地点はどこでもかまいませんが、ゴールは遙かかなたにおいておきましょう。だいじなのは、専攻する外国語と英語と母語をつねに言語として捉えること。これが、外国語学部生としての言語学習の基本です。本学部の掲げる「3言語×3視座」のポリシーに明確に示されているように、まず、専攻言語をしっかり学び、みなさんがこれまで学習してきた最初の外国語であり、さまざまな場面で用いられている英語力のブラッシュアップを図るとともに、母語を言語として相対化することを身近な目標にしましょう(2~5)。
 言語の数だけ異なる世界があるからこそ、新しい言語を学ぶことは未知の世界に触れる楽しい経験です。私自身、状況に合わせて4言語をほぼ日常的に使い、そのほかにも、必要性に迫られてスラブ諸語で書かれたテクストを読むため、いわゆる多言語使用者なのでしょう。しかし、そのような言語すべてについて、「読む・書く・聴く・話す」が同じレベルでできる必要はまったくないと思っています。それよりも、言語はそれぞれ異なる世界観であり、そこには行動様式や文化価値が密接に結びついているという事実を日々実感しています。ですから、ここでもその視点の重要性を強調しておきます。
 なお、専攻語以外に複数の言語を同時に学びたい場合、労多くして...という結果 もなりかねないため、専攻語の必修課程を終えた3年次からの履修をすすめます。
 「どの言語がいちばんむずかしいでしょうか」という質問をよく受けます。しかし、特定の言語がとくにむずかしいという見方に客観性はありません。入り口が迷路や険しい崖になっている言語、また、どこまで進んでも到達点が遠ざかるように見える言語など、言語は実にさまざまな地形や風景をもっているからです。いずれにしても、母語を含め、ことばは生涯にわたって磨きをかけなくてはなりません。この点では、語学は音楽やスポーツにも通じるところがありますね。
 もうひとつ指摘しておきます。みなさんが、「雨が降っている」「雨続きだ」という文に出逢ったら、それをどう解釈しますか。字義どおり、「雨降り」でしょうか。書き手は、晴れている日を思い描いているかもしれないし、雪を懐かしんでいる可能性もあります。つまり、前後の文脈やモダリティ、音調といっただいじな条件を仮に脇へおいておいても、これは、「雨が降っていない」状態を表現している文ともとれるのです。舞台やドラマで響く「あなたなんか大嫌い!」という台詞のほうが、もっとわかりやすいでしょう。文は多義的である場合がひじょうに多く、文字どおり捉えていたのでは理解できない表現が、至るところで私たちを待ちかまえています。そして、これが外国語の場合はどうなっているか考えてみると、さらにおもしろいと思いませんか。
 さて、ここで、次の点をしっかりおさえておきましょう。みなさんには、言語を学びながら、歴史・文化・社会・経済・政治などを専門的かつ多面的に研究することが求められています。9つの研究コースでは、各々が選んだ研究テーマにそって、地域の特性や他の地域との関わり方などを深く研究し、その成果を卒業論文にまとめるだいじなプロセスが待っています。これが、大学で学ぶ醍醐味ともいえるでしょう(4~7)。
 どうですか。ここまでくると、外国語学習はもう「異次元体験」に留まりませんね。 

(2) どう学ぶのか
 とくに中級以上のレベルの語学のモチベーションを高めるためには、テーマを絞って研究を行なう努力の積み重ねが欠かせません。いくつもの言語を「つまみ食い」していると、言語習得のためだけにことばを学ぶことにもなりかねません。たくさんの外国語を勉強するチャンスに恵まれていると、ついそれを忘れがちです。
 優秀な成績を収めて留学へ出かけるのも一つの身近な目標ですが、それで「しめ」ではありません。サッカーでいえば、ボールコントロールやドリブルをほぼマスターし、試合では相手チームのマークが外せるようになってくる段階、ギター演奏なら、アルペッジョが楽々できるようになり、譜面なしである程度の曲が奏でられる段階が、語学学習の2年終了時に相当するかもしれません。そして、留学する場合、出発前だけでなく、帰ってからの勉強のしかたも重要になるという点も覚えておきましょう(5, 8)。
  「研究コースで学びながら専門性を高めていく段階で、外国語を使ってどう勉強すればよいのでしょうか」という質問もよく受けます。私は、読書と映画鑑賞を推奨しています。少し難しい本でも関心のあるテーマなら読み進められるし、映画は、いうまでもなく、台詞や画像などが絡み合う楽しい芸術です。作品選定に迷ったら、候補を挙げて教員に相談するとよいでしょう。私たちがそのための時間を惜しむことはありません。外国語でなくても、大学時代に読んでおきたい本を3冊挙げるとしたら、ダンテの『神曲』、ゲーテの『ファウスト』、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』でしょう。再読にたえうる古典作品の読書経験は、一生の糧になります。
 外国語を専攻して卒業したら、それを駆使して就ける職業はさまざまです。ただし、みなさんを行きたい地域へ直ちに派遣してくれるような企業はまずないと考えておいたほうがよいでしょう。大学院へ進学した場合も、習得した言語を用いてすぐれた内容の研究発表がすぐにできるようになるケースはごく稀です。時間が必要なのです。「先行(専攻?)逃げ切り」はできません。つまり、仕事に使う場合も、語学は永遠に学ばなくてはならないのです。冒頭で、ゴールは遙かかなたにおこうと書いたのは、そういう意味です(5,9)。

 (3) 関連部局やウェブサイトなど
 履修に関わる4年間のスケジュールをよく確認しましょう。また、巻末には、学部にとくに関連する事務局の案内が載っています(7, 10)。
 このほか、LOYOLAからも、履修関係や留学などについてだいじなアナウンスがあるので、毎日一度は必ずチェックしてください。そして、わからないことが出てきた場合、まず自分で履修要覧とハンドブックをよく読みこんだうえで、それぞれの学科の教員に尋ねましょう。
 それから、学部のウェブサイトや学部長ブログにも粋のよい情報が舞い込むはずですから、ぜひ閲覧してください。

  外国語学習は、「楽しく少しずつ詰め込む」のが秘訣ですが、絶えず、やや背伸びすることを心がけましょう。うまくいったあかつきには、ロシア語なら、ウラジオストクからサンクトペテルブルクまでの広大な地域が、スペイン語なら、本土以外にも、海を越えて中南米などの地域が「自分のもの」になるのですから。目標はつねに大きくもちたいですね。
 履修や留学の制度は整っていますが、充実した学生生活にできるかどうかは、みなさん自身の主体性と目標の立て方で決まります。そして、「言語を」学ぶだけでなく、「言語によって」さまざまなことを学び、歴史認識や文化価値を問題意識の主軸に据えてほしいと強く願っています。
 言語習得は楽ではありませんが、それに取り組んだことにけっして悔いは残らないはずです。将来を見据えた魅力的なプランを思い思いにデザインしてください。みなさんを心から応援しています!

(段落末尾にあるカッコ内の算用数字は、『外国語学部ハンドブック』内のとくに関連する章の番号です)