ようこそ、イスパへ!

内村俊太

 2015年度になり、イスパニア語学科にも新入生が加わりました。さまざまな土地から上智大学に、そしてイスパニア語学科に集まったみなさんを迎え、学科の賑わいも華やかになりました。ぜひ、「イスパ」が提供する語学修得と専門研究のチャンスを活かし、ひとりひとりの夢を実現してほしいと思います。

 さて、大学というまったく新しい環境に飛びこんで、不安を感じない人はごく稀でしょう。今年の新入生も、期待と不安を半分ずつ抱えながらこの4月を迎えたのではないでしょうか。イスパではその不安を少しずつでも軽くできるように、入学式後の学科集会や茶話会など、イスパの雰囲気に触れてもらう機会を設けています。そのひとつにオリエンテーション・キャンプ、通称オリキャンがあります。このオリキャンでは、新入生・「ヘルパー」(オリキャンを準備・運営する有志の上級生たち)・教員が学科ごとに泊まりがけで出かけ、親睦を深めつつ、履修登録をはじめとする大学生活のイロハを新入生に身につけてもらうことを目的としています。今年は4月5、6日に行われました。

 きっと新入生のなかには、行く前にはこのオリキャン自体にも不安を感じていた人もいると思います。まだ会ったばかりのメンバーなのに、いきなり泊まりがけで行動するのですから。初日冒頭の履修説明では、まだまだ硬そうな表情が多かったように見えました。でも、僕が見たかぎりでは、初日後半のレクリエーションを境にして新入生の表情が一挙に変わったように感じました。2日目の履修相談では、初日とは違う、柔らかな顔つきを見ることができました。もし、茶話会やオリキャンなどの一連の行事をつうじて新入生の気持ちを少しでも軽くすることができたのなら、とても嬉しいことです。

 ほんの少し前まで、みなさんはまだお互いを知らないままでした。でも、今や同じ道で切磋琢磨していく仲間同士です。いよいよ、上智大学での授業も始まります。そのなかで、みなさんが少しずつ「新入生」から「イスパ生」に変わっていくことを楽しみにしています。

ようこそ、イスパへ!(ヘルパー、教員より)

ようこそ、イスパへ!(ヘルパー、教員より)

 最後に。

 一連の行事は同学会などの上級生の献身があってはじめて実現できたものでした。とくに、ヘルパーは春休みをつうじてオリキャン準備のために本当にがんばってくれました。僕はまだイスパに来て3年目ですが、これがイスパのよき「伝統」だということはよく分かります。伝統は、イスパニア語では“tradición”です。少し堅苦しい語感があるかもしれませんが、西和辞典で引いてみてください。その語源について、ラテン語の「手渡す」という動詞だと書いてあるはずです。誰かから別の誰かに何か大事なものを手渡すこと。そして、さらに次の誰かに大切に手渡していくこと。本来、tradiciónとは、このようなその都度の営みそのものを指し示すための言葉として生まれたのでしょう。このような意味で、イスパにはよきtradiciónが受け継がれています。それがこれからも手渡されていくことを願っています。