2012年

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El Gallinero 第7回公演

La zapatera prodigiosa  素晴らしい靴屋の女房
作者:Federico García Lorca(1898-1936, España)
フェデリコ・ガルシア・ロルカ

 

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スペイン、アンダルシアの田舎町に一軒の小さな靴屋があった。18歳の娘を嫁にもらった53歳の靴屋。若くてモテる女房に、堅物の夫は振り回され、やがて家出をしてしまう。そこで女房は居酒屋を営むことになるが、ある日、旅芸人に扮した夫が女房の暮らしぶりを見にやってくる。

フェデリコ・ガルシア・ロルカは、1898年スペイン、グラナダに生まれた。子供の頃から文芸に親しみ、マドリードに出てから本格的な文学活動を始めた。1928年出版の『ジプシー歌集』によって名声を得る。シュールリアリズムのダリやブニュエルと親交が深かった。『素晴らしい靴屋の女房』は1930年の作品である。1933年からロルカ三大悲劇といわれる『血の婚礼』『イェルマ』『ベルナルダ・アルバの家』を発表した。1936年、スペイン内戦のさなかにフランコ軍によって38歳で殺され、彼の全集は1953年まで出版されることはなかった。

公演日:
ゲネプロ 2012年11月07日
本公演    2012年11月10日(上智大学10号館講堂  外国語学部語劇祭)

演出:棚村瑞貴
出演:山口梨佐 小林敬史 井戸麻衣 楊塑予 江浦健太 安井紀生 棚村瑞貴 
   徳納慈(ポルトガル語劇団)松永英華(ポルトガル語劇団)

OCW(Open Course Ware)から閲覧可能です。

 

[寄稿]
私と語劇とLa zapatera prodigiosa

zapatero役 小林敬史

この劇で最も意識したのは、場面ごとに靴屋の声の大きさや調子に違いを持たせることでした。気持ちが高ぶっている時は声を大きくして荒らげ、女房にうんざりして参ってしまった時は声の調子を落としひどく疲れているように演じました。また、劇の後半では、靴屋が村の人たちに正体がばれないよう人形使いに変装していることから、前半とは異なる動きを見せなくてはならず、一人二役のようでした。物語を聞かせる場面は、舌なめずりをして好色な男の雰囲気を出したり、セリフのスピードを速めることで緊迫した状況を表現したり、裏声を使ったりするなど、靴屋の演技の中で一番工夫をしたところでした。

演技に意識を集中させるあまり、肝心のセリフが飛んでしまうこともありましたが、練習前や昼休みに読み合わせに協力してくれた他の役の人たちのおかげで、演技の練習とセリフの暗記を両立することができました。本番が近付いてくると、靴屋の行動や考え方には自分と似ている部分があるなと感じるようにもなり(靴屋が私に似ていたのではなく、役を演じたことで私が靴屋に似たのかもしれません)靴屋にさらに愛着を持てるようになりました。

このように、大変な役でしたが、公演が終わった後はそれまでの苦労が全て達成感へと変わりました。役者、字幕、照明、音響、大道具、小道具等、語劇メンバー全員が一丸となって一つの舞台を作り上げる素晴らしさ・楽しさを再度実感し、また来年も語劇に参加したいと思いました。そして、これは毎回の公演に言えることですが、抑揚や感情に気を配り全身を動かしながら何度も口にしたスペイン語は公演後も印象深く自分の中に残り続け、様々な場面で助けとなってくれます。例えば、公演後であっても、文法や動詞の活用、形容詞と前置詞の組み合わせなどを思い出すためにセリフを口にすることがあります。生活面・学習面共に、語劇を通して非常に充実した日々を過ごすことができました。

 

El gallinero 第6回公演

Alicia en el país de las maravillas 『不思議の国のアリス』
(原題  Alice’s Adventures in Wonderland)
作者:Lewis Carroll (1832-1898, Inglaterra) ルイス・キャロル

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名作のスペイン語版をガジネロ風にアレンジして上演した。おおむね、あらすじは原作通りだが、「不思議の国」を舞台上に出現させるために、小道具・大道具と演出に多くの工夫が凝らされた。

公演日:
ゲネプロ 2012年6月15日
本公演    2012年6月16日(上智大学10号館講堂)

演出:木村至
出演:井戸麻衣子 高橋梓 山口梨佐 小林敬史 安井紀生 棚村瑞貴 
   小野瑠奈アンヘラ 木村至 江浦健太 范瑞豪

 

[寄稿]
私と語劇とAliciaと

Alicia 役 井戸麻衣子

大学2年の春、私は7歳の少女になって不思議の国に迷い込むことになりました。私が語劇に入ったのは大学1年の4月。2011年の6月公演Las ruinasの観光客役で語劇デビューを果たし、同じ年の11月公演Las clavesでは先輩方の助けを大いに借りながら主役の女性3人の内の1人を演じました。そんな私が初めて1人で主役をやることになったのが、このAlicia en el país de las maravillasです。

毎年人員不足に悩んでいるイスパニア語劇ですが、そこに集まったメンバーひとりひとりの個性とパワーは他の語劇にも負けないものがあります。Alicia公演は特にそれぞれの個性が光る舞台になっていました。歌が得意な子にはスポットライトを浴びて1曲披露するシーンがあり、個人所有の楽器を持ち出して舞台上で弾きはじめるメンバーもいました。当時の部長が本場アルゼンチンで入手したマテ茶のカップは小道具として大活躍。トランプ兵や、腕を広げると蝶に変身する芋虫など、アイデアたっぷりの衣装たちは、入部したばかりの1年生が中心となって作成したものでした。全員が自分のやりたいことをやりきった結果、次々と目新しいものが飛び込んでは去っていく、忙しくて楽しい舞台が出来上がりました。

Aliciaは好奇心旺盛な女の子です。ウサギを見たら追いかけずにはいられないし、怪しい瓶の中身は飲んでしまうし、花にバカにされれば怒って言い返すし、帰り方がわからなくなると途方に暮れて泣き出します。時には舞台上を飛び出してまで走り回る元気なAliciaを演じることは、私にとって大きな挑戦でした。スペイン語の台詞量も今までよりずっと多く、覚えるまでには時間がかかりました。それでもやりきることができたのは、周りのメンバーや先生方が支えてくれたこと、そして何より「楽しい」という気持ちがあったからでした。

Aliciaとして過ごした数ヶ月間を思い出すと、もう一度戻りたいような、もうあんな大変な思いはしたくないような、複雑な気持ちになります。しかし、あの経験が自分の自信になったことは確かです。これから先困難にぶつかったとしても、自分の中のAliciaを思い出すと、一緒に乗り越えられるような気がします。