ドイツで学ぶということ

宮越かなみ

Hallo! こんにちは。
ドイツ語学科3年の宮越かなみです。
在外履修でのザールラント大学への半年間の留学後、現在は交換留学制度を利用しボン大学に留学しています。
ドイツでの引越しやそれぞれの都市の魅力などみなさんにお伝えしたいことはたくさんあるのですが、今回は私がザールラント滞在中に受験したDSH試験とドイツでの授業についてお話したいと思います。

 日本で有名なドイツ語試験というとゲーテインスティトゥートの試験や独検があげられると思います。恥ずかしながら私はドイツに来て実際に自分が受験することになるまでDSH試験の存在を知りませんでした。
DSH試験に関する日本語の情報も少なく、私自身も半年前には情報収集に苦労しました。そこで今回はDSH試験について私の知っていることをこのブログを通してお伝えしたいと思います。受験を考えている方に少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。

 DSHというのは”Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang”の略称で、日本語にすると“大学入学のためのドイツ語試験“となります。
つまりドイツの大学に正規の学生として学部入学を目指している方向けの試験です。評価基準は1〜3の3段階で、DSH2でほぼ全ての学部、DSH3で医学部などへの入学が許可されます。
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ゲーテインスティトゥートの試験や独検と違い、DSH試験はドイツ国内の大学でのみ開催されており、それぞれの大学ごとに提供される問題も特色が異なるようです。(ザールラント大学は情報学など理系分野が有名なため、試験内容も理系分野が多い傾向にあります。)

試験は筆記と口頭試験の二つからなっており、Leseverstehen(読解)、Wissenschaftssprachliche Strukturen(文法)、Hörverstehen(聴解)、Textproduktion(作文)の筆記試験を受けた後に、一週間ほど開けて口頭試験が行われます。
筆記試験には独独辞典のみ持ち込みが許可されています。
私の通っていたザールラント大学のDSH対策コースでは、半年間の授業の出席状況や成績によって口頭試験の免除を受けることができ、ほとんどが筆記試験のみの受験でした。
確実にDSHに合格するにはやはり大学付属の語学学校でDSH対策コースを受けるのが一番です。というのも口頭試験免除や過去問などを用いた予備校さながらのDSH試験に特化した授業が受けられるからです。私も実際にザールラント大学でのDSH対策コースを経て、無事にDSH2に合格することができました。

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某有名カフェを彷彿とさせる図書館併設のStarbooksカフェ
放課後には息抜きにクラスメイトと大学内のカフェをよく訪れていました

 晴れてDSH試験の合格証を手にしてボンへとやってきて、ドイツ人と共に講義を受けているわけですが、ドイツの大学で学ぶということは留学生にとって簡単なことばかりではありません。実際に授業を受けていて感じるのは、いかにも日本の大学生らしい感想ではありますが、勉強熱心な学生が多いということです。ドイツの大学にも日本と同じく少人数制のゼミや大人数での聴講が中心の授業などがありますが、学生の学びに対する姿勢は大きく異なります。ドイツの学生たちは授業に向けて膨大な量の資料を読み込み、大人数の聴講授業であっても疑問や意見を積極的に発信します。実際に私の参加している授業でも教授と学生たちが熱く議論し始めるといった場面が何度もありました。学生の年代も同世代から私の祖父母に当たるくらいの年代までと幅広く、大学や専攻を変えて学び直しているという話もよく耳にします。これにはドイツにおける大学費用の安さや就職制度の違いなどの背景がありますが、日本の当たり前に慣れていた私にとっては全てが新鮮でした。

 日本ではドイツ語圏への留学は英語圏に比べてメジャーとは言えませんし、必ずと言って良い程なぜドイツなのかと問われます。私の場合は交換留学という決められた枠の中での留学であり、留学を決めたのもドイツ文化を実際に体験してみたいという小さな好奇心からでした。帰国が近づいてきた今でも授業では表現力の低さや知識不足を実感し、落ち込むことばかりです。しかしドイツという未知の世界に飛び込んでみて、勉学面のみならず精神面でも多くのものを得ました。ドイツで学ぶということには様々な可能性が秘められています。英語圏ではなく“ドイツ”に留学したからこそ難民問題や多言語教育といった話題も身近に感じることができました。

 振り返ってみると今回のドイツ留学は、出発前に想像していたものとは大きく異なるものでした。特にDSH試験の受験は本当に思いがけない出来事であり、この経験は私の中で憧れだった海外での生活に現実味を与えるものとなりました。そして同時にこの留学がゴールではないということも実感させてくれました。今回のこの留学を将来どのように生かすことができるのかまだわかりません。しかしまずはこのような貴重な経験ができることに感謝しつつ、残りの留学期間を全うしたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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同じくドイツ語学科からザールラント大学へ留学していた友人と