2014年10月チュニジア議会選挙

岩崎えり奈

 2014年10月26日、2011年の「革命」後初の国会選挙がチュニジアで行われた。チュニジアでは2011年の「革命」以来、紆余曲折しつつも、選挙で選ばれた暫定制憲議会により民主的な政治体制が維持されてきた。今回の選挙は民主的な政治体制への円滑な移行の重要な局面であり、その行方はアラブ地域における民主化の行方を占う試金石となるところから、大いに注目された。

 今回の選挙で注目されたのはイスラーム政党のナフダ党とその有力な対抗馬の「世俗」政党「チュニジアの呼びかけ」党(Nida Tunis)がどれだけ得票できるかどうかであった。ナフダ党は2011年憲法制定議会選挙で勝利し、三党連立「トロイカ」内閣を率いて政権運営を担ってきた。しかし、人々が期待したようには経済状態は好転せず、加えて二人も政治家が暗殺され、最近ではアラブ諸国で最大数の若者がイスラーム国に参加したことなど、経済的にも政治的にも様々な問題を抱え、解決できなかった。このため、今回の選挙は、そのまずい政権運営に対し批判の多かったナフダ党に対する信任投票の意味をもっていた。

 この選挙に、中根一幸外務大臣政務官を団長とする選挙監視団が日本から派遣され、それに参加する機会を得た(写真1)。選挙監視団が訪れたのはチュニス市内のマルセイユ小学校,バルドー地区のハビブ・ブルギバ通り小学校及びカルタゴ地区のサランボー小学校の3ヵ所の投票所。午後に訪れた投票所は昼時であったためか閑散としていたが、午前中に訪れた2か所の投票所では投票の順番を待つ人々が整然と列をつくっていたのが印象的であった。

写真1選挙監視団

写真1 中根政務官を団長とする選挙監視団(チュニス)

 チュニジアの選挙制度では、18歳以上の有権者が選挙登録名簿に登録し、投票する。投票所の教室で選挙登録者名簿に自分の氏名を確認し、投票用紙を受け取る。そして、投票済の証拠として青インクを指につける(写真2)。

写真2投票所内

写真2 投票所の小学校教室。投票に来た男性(右手前)が自分の氏名を選挙登録者名簿で確認している。(チュニス)

 さて結果はと言えば、「選挙のための独立高等機構」(選挙管理委員会)の10月30日付け発表によれば、大方の予想どおりであり、「チュニジアの呼びかけ」党が勝利した。選挙当日の晩には、選挙速報が出された。それを踏まえて「チュニジアの呼びかけ」党が勝利を宣言した。そして、ナフダ党はどう対応するかが注目されたが、早々と敗北を認めた。

 しかし、ナフダ党は「チュニジアの呼びかけ」党に負けたとはいえ、同党に次ぐ第二の勢力である。今後、11月末の大統領選挙後に「チュニジアの呼びかけ」党の組閣作業が本格化する。ナフダ党と連立政権を組むのか、他の「世俗」政党と組むのか。いずれにしても、同党はナフダ党と向き合っていかねばならない。それは、大げさにいえば、2つの政治モデルをどううまく共存させていくのか、あるいは折り合いをつけていくのかという課題である。チュニジアの民主化がどう進展していくのか、ますます注視していかねばならない。