都市化の背景にあるものとは?~コートジボワール滞在記~

岡田 あゆこ

 2018年夏、私は「アフリカに学ぶ」という大学内のプログラムに参加し、約二週間西アフリカ最大の経済大国であるコートジボワールに滞在した。このプログラムには、大きく分けて二つの魅力がある。第一に、学年/学部学科の異なる「コートジボワールに行きたい」という共通の目的を持った仲間に出会えることである。プログラム参加前(事前研修)/プログラム中/プログラム実施後(事後研修)というように、長期間にわたってそれぞれの興味や疑問点について議論する場が設けられ、異なる価値観や興味を持つ学生同士で意見を交換することができる。議論は、将来の野望や計画など日常ではなかなか話しづらい深いテーマにも及び、ざっくばらんに話せたお陰で、プログラム終了後も関係が続く大切な友達や先輩、後輩を得ることになり、とても大きな財産となった。第二に、自分一人では絶対にできないような貴重な経験ができることだ。プログラム中の訪問先は、参加メンバーの興味関心に合わせて設定される。私が参加した回では、ほとんど全員が「国際協力」に関心があり分野としては「教育」や「保健医療」を挙げた人が多かったため、国際協力のアクターであるJICAやAfDB(アフリカ開発銀行)、UNICEFや豊田通商を訪れ、それぞれのプロジェクトの見学や組織の概要について学んだ。 

 このプログラムは基本的に年に二回(春休みと夏休み)行われており、滞在国も様々である。これまでにフランス語圏アフリカでは、コートジボワール、ベナン、カメルーンでこのプログラムが実施されている。自分の興味や関心を深められるだけではなく生身のフランス語を感じる機会でもあり、学生自らが「作り上げる」このプログラムに、フランス語圏アフリカに興味のある人はぜひ参加してほしい。 

 コートジボワールでは主に首都アビジャンに滞在し、都市化の進行度に驚いた。

コートジボワール・アビジャンに本部を置くAfDB(アフリカ開発銀行)。清潔感があり、日本の高層ビルと何ら変わりのないように見える。

コートジボワール・アビジャンに本部を置くAfDB(アフリカ開発銀行)。清潔感があり、日本の高層ビルと何ら変わりのないように見える。


AfDB内から撮影したアビジャンの風景。高層ビルの間を車が走っているこの風景からは、この国がなぜ「開発途上国」に分類されるのか分からない

AfDB内から撮影したアビジャンの風景。高層ビルの間を車が走っているこの風景からは、この国がなぜ「開発途上国」に分類されるのか分からない。

しかし同じアビジャン市内でも、幹線道路から脇に逸れると全く違う光景が広がっている。

 

トタン板を重ねた簡易な住居が連なっている。

トタン板を重ねた簡易な住居が連なっている。

 これら3枚の写真を見るだけでも、この町には「目に見える大きな格差」が存在していることがわかるのではないだろうか。経済的・社会的地位の低い住民の多くは戸籍登録すらなされておらず、国際的な支援機関は、具体的に彼らの存在を把握し援助することができない。すなわち、同国が高層ビルの建設や車の使用といった「都市化」を急速に進展できた背景には、国際社会から見放され続けている人々の存在があるということである。国際協力における数々のアクターにより実施されているプロジェクトは多数あり、内容もインフラ整備やメディア支援、保健分野など多岐に渡っているが、その多くの対象が「国民」と規定されている。行政のガバナンス能力強化を目的とした支援プロジェクトがあっても、国際社会の視野に入る人と、入らない人との間にある差異が国内において視覚的に浮き彫りになっているという現実がある。 

 そもそも国際協力に興味のあった私は、大学で国際協力を題材とした授業を履修し、GCP(グローバル・コンピテンシー・プログラム)国際協力コースに所属するなど、できるだけ普段から国際協力に関わろうとしてきた。しかし今回のプログラムで、実際に国際協力の現場を見学して、自分の国際協力に対する知識の薄さや「援助における役割分担」の難しさなど、多くの新たな発見があり、モチベーションがますます向上した。もちろん机上での研究や情報収集は必要だが、自分の興味関心のある分野に関係のある現地に行くことはかけがえのない経験になる。自分の将来を考える上で大いに役立つに違いない。